| 第27回原子力安全委員会 資料第1-9号 |
原子力施設等の防災対策について
平成55年6月
(平成元年3月一部改定)
(平成4年6月一部改定)
(平成10年11月一部改定)
(平成11年9月一部改定)
(平成12年5月一部改定)
(平成13年3月一部改定)
(平成13年6月一部改定)
(平成14年4月一部改定)
原子力安全委員会
目次
| 第1章 | 序 | ………………… | 1 |
| 第2章 | 防災対策一般 | ………………… | 2 |
| 2-1 | 原子力防災対策の特殊性等 | ………………… | 2 |
| 2-2 | 放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及ぴ被ばく低減化措置 | ………………… | 2 |
| 2-3 | 原子力施設における防災対策及び異常事態の把握 | ………………… | 4 |
| 2-4 | 周辺住民等への情報提供 | ………………… | 6 |
| 2-5 | 防災業務関係者等の教育及び訓練 | ………………… | 7 |
| 2-6 | 諸設備の整備 | ………………… | 8 |
| 2-7 | 防災関係資料の整備 | ………………… | 9 |
| 2-8 | オフサイトセンターの整備 | ………………… | 10 |
| 2-9 | 核燃料物質等の輸送時の防災対策 | ………………… | 11 |
| 第3章 | 防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲 | ………………… | 12 |
| 3-1 | 地域の範囲の考え方 | ………………… | 12 |
| 3-2 | 地域の範囲の選定 | ………………… | 12 |
| 3-3 | 具体的な地域防災計画の策定等に当たっての留意点 | ………………… | 13 |
| 第4章 | 緊急時環境放射線モニタリング | ………………… | 15 |
| 4-1 | 目的等 | ………………… | 15 |
| 4-2 | 段階 | ………………… | 15 |
| 4-3 | 緊急時モニタリング体制 | ………………… | 16 |
| 4-4 | 準備事項 | ………………… | 16 |
| 4-5 | モニタリング地点の決定 | ………………… | 17 |
| 4-6 | 第1段階のモニタリング | ………………… | 17 |
| 4-7 | 第2段階のモニタリング | ………………… | 19 |
| 第5章 | 災害応急対策の実施のための指針 | ………………… | 20 |
| 5-1 | 異常事態発生の際の通報基準及び緊急事態判断基準 | ………………… | 20 |
| 5-2 | 防護対策 | ………………… | 22 |
| 5-3 | 防護対策のための指標 | ………………… | 24 |
| 第6章 | 緊急被ぱく医療 | ………………… | 29 |
| 6-1 | 緊急被ばく医療の基本的考え方 | ………………… | 29 |
| 6-2 | 原子力緊急事態の発生時における緊急被ぱく医療 | ………………… | 29 |
| 6-3 | 緊急被ばく医療体制 | ………………… | 30 |
| 6-4 | 緊急被ぱく医療における国、地方公共団体、原子力事業者等の責務 | ………………… | 33 |
| 6-5 | 緊急被ばく医療活動のための要件 | ………………… | 34 |
| 付属資料 | ………………… | 37 | |
| 1 | 通報連絡様式 | ………………… | 39 |
| 2 | 核燃料物質等の輸送に係る仮想的な事故評価について | ………………… | 56 |
| 3 | EPZについての技術的側面からの検討 | ………………… | 58 |
| 4 | 原子力施設等の異常時の通報基準、緊急事態の判断の基準について | ………………… | 82 |
| 5 | 防護対策指標について | ………………… | 99 |
| 6 | 周辺住民等に対する安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について | ………………… | 103 |
| 7 | 防災業務関係者の安定ヨウ素剤予防服用について | ………………… | 106 |
| 8 | 防災業務関係者の放射線防護に係る指標について | ………………… | 107 |
| 9 | SPEEDIネットワークシステムを用いた予測線量の算定について | ………………… | 108 |
| 10 | 屋内退避等の有効性について | ………………… | 109 |
| 11 | 空間放射線量率分布及び濃度分布の特徴 | ………………… | 112 |
| 12 | 飲食物摂取制限に関する指標について | ………………… | 117 |
| 13 | 緊急被ぱく医療体制の概要 | ………………… | 119 |
| 14 | 各医療体制における設備、資機材等 | ………………… | 120 |
| 15 | 本指針の改訂の経過 | ………………… | 121 |
なお、今後も、防災対策の内容が、実効性の高いものになるよう検討を継続し、新たな 知見等を積極的に取り入れることにより、必要に応じて、本指針の見直しを行っていくこ ととする。
第2章防災対策一般
2-2放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及び被ばく低減化措置
2-3原子力施設における防災対策及び異常事態の把握
2-4周辺住民等への情報提供
2-5防災業務関係者等の教育及び訓練 2-6諸設備の整備 2-7防災関係資料の整備 2-8オフサイトセンターの整備 2-9核燃料物質等の輸送時の防災対策
第3章 防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲
2-1原子力防災対策の特殊性等
原子力施設における事故により、放射性物質又は放射線の異常な放出あるいはそのお
それがある場合、防災活動の内容としては、施設における異常事態の検知及び関係機関
への情報の連絡に始まり、緊急時環境放射線モニタリング(以下「緊急時モニタリン
グ」という。定義は第4章に記載)の開始、災害対策本部の設置、住民への情報伝達を
含む連絡体制の確立、関係諸機関の所定の行動、災害の低減化のための住民の行動に関
する指示等が挙げられる。これらの防災活動を含む原子力防災対策には、一般防災対策
活動に共通あるいは類似のものに加えて原子力に特有なものがある。原子力に特有なも
のとして以下のことが考えられる。
@放射性物質又は放射線の存在は、放射線測定器を用いることにより、健康への影響
が考えられない微量でも検知できる。しかし、その存在を、五感で直接感じることが
できず、被ぱくの程度を自ら判断できないこと。
A一般的な災害と異なり、自らの判断で対処するためには、放射線等に関する基本的
な知識を必要とすること。
B原子力災害は原子力事業者の活動によって発生するため、原子力事業者がその予防
対策、応急対策について、大きな責務を有すること。
C原子力防災には、原子力に関する専門的知識を有する機関の役割や指示、助言等が
重要であること。
一方、通報連絡、住民の退避措置、飲食物の摂取制限等の防災対策の実施について
は、一般防災対策との共通性あるいは類似性があるので、専門知識に基づく適切な指示
があれば、これを活用した対応が可能である。
したがって万一、放射性物質又は放射線の異常な放出あるいはそのおそれのある場合に
は、前述の特殊性、類似性等を勘案して、適切な対策を講じることにより、周辺住民等
の心理的な動揺あるいは混乱を防止し、異常事態による影響をできる限り低くすること
が重要である。
このため、災害対策基本法、原子力災害対策特別措置法等に基づいて原子力防災計画
の作成、防災資機材の整備、防災訓練の実施等により、緊急時の活動が円滑かつ有効に
行われるよう普段から準備する必要がある。
原子力防災計画の立案あるいは充実を図るに当たって基本となる、原子力施設からの
放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及び被ばく低減化措置の考え方は以下
のとおりである。
(1)放射性物質又は放射線の放出形態
原子力施設からの放射性物質又は放射線の放出の形態は、施設の特性や事革の形態
により異なるものであり、対象とするそれぞれの施設等に応じた原子力防災計画の立
案が必要である。
@原子炉施設等で想定される放出形態
原子炉施設等においては、多重の物理的防護壁により施設からの直接の放射線は
ほとんど遮へいされ、また、固体状、液体状の放射性物質が広範囲に漏えいする可
能性も低い。したがって、周辺環境に異常に放出され広域に影響を与える可能性の
高い放射性物質としては、気体状のクリプトン、キセノン等の希ガス及び揮発性の
放射性物質であるヨウ素を主に考慮すべきである。また、これらに付随して放射性
物質がエアロゾル(気体中に浮遊する微粒子)として放出される可能性もあるが、
その場合にも、上記の放射性物質に対する対策を充実しておけば、所要の対応がで
きるものと考えられる。
これらの放出された放射性物質は、プルーム(気体状あるいは粒子状の物質を含
んだ空気の一団)となって風下方向に移動するが、移動距離が長くなるにしたがっ
て、拡散により濃度は低くなる。
A核燃料施設で想定される放出形態
(イ)火災、爆発等による核燃料物質の放出
核燃料施設においては、火災、爆発、漏えい等によって施設からウラン又はプ
ルトニウム等がエアロゾルとして政出されることが考えられる。これらの放射性
物質は上記@と同様にプルームとなって放出、拡散されるが、爆発等により、フ
ィルタを通さずに放出され、量的には多いとみられる粗い粒子状のものは、気体
状の物質に比べ早く沈降すると考えられる。また、フィルタを通して放出される
場合には、気体状の物質とほぽ同様に振る舞うと考えられる。
(ロ)臨界事故
臨界事故が発生した場合、核分裂反応によって生じた核分裂生成物の放出に加
え、反応によって中性子線及ぴガンマ線が発生し、周囲に放出される。この場
合、施設の遮へいが十分な箇所で発生した場合は放射線の影響は無視できるが、
遮へいが十分でない場合は、施設から直接放出される中性子線及びガンマ線に対
する防護が重要となる。
施設から直接放出される放射線は、施設内外の遮へい条件にもよるが、施設か
らの距離のほぽ2乗に反比例して減衰するため、その影響は近距離に限定され
る。
核分裂反応によって生じた核分裂生成物の放出は、希ガス及びヨウ素を考慮す
ればよいが、その潜在的な総量は原子炉施設に比べ極めて少ない。
なお、原子力施設から液体状の放射性物質の流出があったとしても、多数の障壁
や大きな希釈効果によって、周辺環境に重大な影響を及ぽすような流出の可能性は
ほとんど考えられない。
(2)被ばくの形態
施設から放出される放射性物質及び放射線による被ばくの形態は、大きく「外部被
ばく」と「内部被ばく」に分けられる。
@外部被ぱく
外部被ばくとは、体外から放射線を受ける場合の被ぱくであり、主に原子力施設
から直接放出される中性子線及びガンマ線並ぴに放射性プルームからのガンマ線に
よって生じる。
A内部被ばく
内部被ばくとは、吸入、経口摂取等によって体内に取り込んだ放射性物質が生体
の各所に沈着し、体内組織(甲状腺、肺、骨、胃腸等)が放射線を受ける場合の被
ぱくであり、主に電離効果の高いアルファ線及ぴベータ線によって生じる。
(3)被ぱくの低減化措置
放射性プルームによる被ばくは、その放射性物質の濃度、放射線のエネルギー及び
放射性プルームによる影響の継続時間に比例する。このため、放射性プルームによる
被ばくを低減化する措置としては、気密性の高い場所への移動、放射線の遮へい効果
の高い場所への退避及び放出源からの風下軸から遠ざかることが有効である。この
際、その地域のその時期における卓越した風向き等を考慮し、風下軸からある幅を持
った範囲の住民に対して措置を講じることが重要となる。
風下方向の大気中の放射性物質の濃度は、放出量、放出源の高さ、放出源からの距
離、風速及ぴ大気安定度(大気拡散の程度を示すもの)の関数として表される。な
お、地勢による影響については、風洞実験によって確かめることができる。また、緊
急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDIネットワークシステム
System for Prediction of Envirommental Emergency Dose Infooation)により、事故時の
実気象情報による地形の影響を含めた拡散等の予測計算を迅速に行うことが可能であ
る。
臨界事故により原子力施設から直接放出される中性子線及びガンマ線については、
距離による減衰や建家等の遮へい効果があり、原子力事業所から遠ざかることや遮へ
い効果の高い場所への退避により被ぱくを大きく低減できる。なお、この場合、退避
に当たっては風向きを考慮する必要はない。
飲食物の経ロ摂取等による内部被ばくに対しては、周辺住民等が汚染された飲食物
を摂取するまでには通常時間的余裕があるため、その間に飲食物中の放射性物質の濃
度を定量することによって、摂取制限等の対策を講じることができる。
原子力施設に対しては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以
下「原子炉等規制法」という。)、原子力災害対策特別措置法等に基づき、種々の安全
・防災対策が講じられる。
しかしながら、これらの安全・防災対策にもかかわらず、施設周辺に、放射性物質又
は放射線の異常な放出が発生した場合、原子力事業者は、原子力災害の発生やその拡大
の防止活動について、責任を持って実行しなければならない。このため、原子力事業者
は、この施設内の対策及び施設外への協力体制も含めた原子力災害予防対策、緊急事態
応急対策及び事後対策についての防災業務計画を策定し、従業員に対する教育と訓練を
実施して、緊急時に適切に対処できるよう準備しておくことが必要である。特に、防災
対策の適切な実施のために、異常事態に関する情報を、関係機関に迅速かつ正確に通報
することは、原子力事業者の極めて重大な責務である。これに加えて、ある原子力施設
において事故が生じた場合、日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構及ぴその他の
原子力事業者は、その専門家・要員及ぴ保有する原子力防災資機材等を動員して、防災
対策に積極的に協力をすることが重要である。さらに、これらの者以外の原子力関係者
等の自主的な協力を得ることも有効である。また、普段から緊急時に備え、原子力事業
者、国、都道府県、市町村等の関係機関との問で、緊急事態応急対策拠点施設(以下「
オフサイトセンター」という。2-8に記載。)において定期的に連絡会を開催するこ
となどにより、緊密な連絡調整を図っておく必要がある。
(1)防災対策上の異常事態の態様とその対応
原子力施設において、その施設周辺に、放射性物質又は放射線の異常な放出が瞬時
に生ずることは、原子力施設におけるこれらに対しての閉じ込め機能等の安全対策が
あるため、ごく一部の事象を除いてほとんど考えられず、事前になんらかの先行的事
象の発生やその検知があると考えられる。このような先行的事象は、原子力施設内の
放射線モニタ等の設備により把握できるので、原子力事業者の適切な対応等によっ
て、施設内の異常事態が、必ずしも直ちに周辺住民等に影響を与えるような事態に至
る可能性は低いが、万一そのような事態になったとしても、これに至るまでにある程
度の時間的経過があるものと考えられる。この時間的余裕を有効に利用して、万一の
場合への種々の対策の準備ができるよう平常時から体制を整えておく必要がある。
一方、核燃料施設の臨界事故に伴う中性子線及びガンマ線あるいは火災、爆発等に
伴うウラン、プルトニウム等の施設周辺への放出は、先行的事象から放出までの時間
的な余裕が少ない場合も考えられるが、これらの事象の影響を及ぽす範囲は比較的狭
い範囲に限定されると考えられるため、その範囲内で、具体的な対応策を準備してお
けぱ、適切な対応が可能であると考えられる。
(2)異常事態の把握の手段
原子力施設において、放射性物質又は放射線の異常な放出や施設内の異常事態が発
生した場合には、その異常事態の拡大の防止及び災害応急対策の準備という面から、
状況把握が重要となる。このため、原子力施設の特性を踏まえつつ、施設内の異常事
態や施設外の放射線量を適切に把握するための測定器等を配置するとともに、監視体
制を整備しておく必要がある。また、原子力事業者から異常事態の報告が迅速かつ正
確に、国、地方公共団体等関係機関に行われなければならない。この際、必要となる
内容は、第一に施設からの放射性物質の放出状況(量、組成、継続時間等)と敷地境
界等における空間放射線量であり、第二に主要な地点における予測線量と事態の今後
の見通しであり、これとあわせて、これらの裏付けのための施設の状況に関する情報
と考えられる。
このような情報が緊急時に迅速かつ正確に伝えられるためには、あらかじめ通報連
絡様式を定め、原子力施設においては様式の中の情報が迅速に得られるような措置を
講じておく必要がある。通報連絡様式の例を付属資料1に示す。
(1)平常時における周辺住民等への情報提供
原子力災害の特殊性に鑑み、原子力施設の周辺住民等に対して緊急時に混乱と動揺一
を起こすことなく、国、都道府県及び市町村の災害対策本部の指示にしたがって秩序
ある行動をとれるように、普段から原子力防災に関して、周辺住民等、特に防災対策r
を重点的に充実すべき地域の範囲の周辺住民等への情報提供を行う必要がある。その
内容としては例えば次のものが挙げられる。
(イ)放射性物質及び放射線の特性
それぞれの原子力施設において取り扱う放射性物質及び放射線に関する基礎知識
(ロ)原子力事業所の概要
原子力施設の安全性の仕組みの概要、平常時及び緊急時の環境放射線の監視の仕
組みの概要
(ハ)原子力災害とその特殊性
放射性物質又は放射線による被ばくの形態、放射線の影響及び被ばくを避ける方
法
(二)原子力災害発生時における防災対策の内容
緊急時の通報連絡体制、住民の避難経路及び場所並びに防災活動の手順
特に(二)において、周辺住民等は災害対策本部の指示に従った行動をとることが必
要であることを周知徹底することが重要である。
これらの情報提供に当たっては、周辺住民等が理解しやすい内容として行わなけれ
ばならないが、その際、パンフレット、ビデオ、スライド、インターネット等の多様
な手段により周知を図ることが有効である。さらに、学校、職場等の場を活用し、集
団の責任者及び構成員に対して、実態に則した情報提供を図ることが有効であると考
えられる。
(2)緊急時における情報提供
緊急時には、周辺住民等に正確な情報提供を迅速にわかりやすい内容で行うことが
重要であり、特に、屋内退避や避難の指示など重要なものについては確実に伝達でき
る体制や機器を用意しておくことが必要である。この際、高齢者、障害者、外国人、
乳幼児その他のいわゆる災害弱者及ぴ一時滞在者に十分な配慮をした対応が必要であ
る。
また、現地においては様々な情報が錯綜することが予想されるため、オフサイトセ
ンターで情報の集約や整理を行い、周辺住民、報道関係者等に的確に情報を提供する
ことが必要であり、このためにも、対外的に情報の一元的窓口となる広報・報道担当
者を明確にしておくことが重要である。
(1)教育
緊急時における災害応急対策が円滑かつ有効に行われるためには、国、地方公共団
体の担当部局の職員はもとより警察機関、消防機関、自衛隊等の防災業務関係者が冷
静沈着に判断、指示及び行動をすることが重要である。特に、周辺住民等の心理的な
動揺あるいは混乱をおさえるためには、防災業務関係者が原子力防災対策に習熟する
ことが最も重要となることからζ国、都道府県、市町村等において、種々の災害応急
対策を実施する防災業務関係者に、原子力防災対策に関する教育を行うことが必要と
なる。
教育の内容及ぴ程度は、防災業務関係者の有している原子力に関する知識と防災体
制における役割によって異なるが、原子力に関する基礎的な知識のほかに、原子力防
災に関する内容として次のものが必要であると考えられる。
(イ)原子力防災体制及ぴ組織に関する知識
(ロ)安全・防災対策を含む原子力施設に関する知識
(ハ)放射線防護に関する知識(防災資機材の使い方、放射線の健康への影響等)
(二)放射性物質及び放射線の測定方法に関する知識
(ホ)防災対策上の諸設備に関する知識
(へ)被ばくに対する応急手当の知識
これらの教育については、日本原子力研究所及ぴ放射線医学総合研究所等が実施し
ている原子力防災に係る研修コースを充実して、活用することも重要である。
(2)訓練
緊急時において種々の災害応急対策を円滑かつ有効に行うためには、前述の周辺住
民等への情報提供及び防災業務関係者に対する教育訓練とともに、模擬的に防災シス
テムを動かすことによって実効性の向上を図ることが重要である。そのため、定期的
に防災訓練を行い、その結果を第三者も含めて評価検討し、防災体制のさらなる改善
を図っていくことが必要である。
訓練の実施に当たっては、原子力防災対策の特殊性及び一般防災対策との共通点に
着目する必要がある。原子力防災対策においては、原子力防災対策に関する教育を受
けた防災業務関係者が、専門家等の指導・助言を受けて適切に周辺住民等に対して指
示等を行い、これを受けて周辺住民等が秩序ある行動をとれば、一般防災対策と変わ
りなく実効性のある措置を講じることができる。したがって、防災業務関係者の教育
や地域防災体制の整備状況とあわせて、通報、緊急時モニタリング、緊急被ばく医療
等の防災活動の各要素毎に熟練度を高めていく訓練と、周辺住民等の参加も含め、
国、地方公共団体、原子力事業者等の関係機関の連携を確認するための総合的な防災
訓練を適切に組み合わせ、防災体制の充実強化を図っていくことが重要である。
防災訓練としては、その訓練ごとの目的を明確にしつつ、以下のような訓練につい
て、実施することが必要と考えられる。この際には、様々な緊急事態の想定を行った
り、訓練対象区域や重点的訓練ポイントを変化させるなど実効性のある訓練としてい
くことが重要である。
(イ)緊急時通報連絡訓練
(ロ)緊急時モニタリング訓練
(ハ)(イ)、(ロ)及び周辺住民等に対する情報伝達等を組み合わせた訓練
(二)国の支援体制を含めた各地域ごとの総合訓練
(ホ)国による原子力災害対策本部の立ち上げ等を含めた総合合同訓練
原子力防災対策を円滑に実施するためには、あらかじめ緊急通報連絡網、防災業務関係者が必要とする防災資機材等、緊急時モニタリングに関する設備及び機器並びに緊急被ばく医療設備等の整備が必要である。
(1)周辺住民等に対する緊急時の情報伝達網
緊急時において、周辺住民等の行動に関する指示が迅速かつ正確に伝達されるような体制及び設備が必要である。特に原子力防災対策においては、周辺住民等の混乱と同様を避けることが重要であって、そのためにも正確な情報の迅速な伝達が重要である。
体制としては、地域防災計画あるいは実施細目等において、情報伝達に関する責任者及び実施者をあらかじめ定め、同様にして定めたある区域あるいは集落の責任者や周辺住民等に迅速かつ正確な情報が伝達されるよう配慮されることが必要である。
情報の伝達に必要な設備としては、通常の電話のほかに、防災無線網、有線放送、広報車等が挙げられる。また、テレビ及びラジオ等のニュースメディアに対し積極的に情報伝達に関する協力を求めることも重要である。さらに、周辺海域の船舶への情報伝達に関しては、漁業無線、船舶通信の活用が考えられるが、同様に海上保安庁の船舶等による情報の伝達も考慮すべきである。
周辺住民等に対する情報としては、下記の項目について最新の情報を単純かつ理解しやすい表現とすることに加え、真理的不安感を除去するために定期的に繰り返し伝達することが必要である。
(イ)異常事態が生じた施設名及び発生時刻
(ロ)異常事態の状況と今後の予測
(ハ)各区域あるいは集落別の住民のとるべき行動についての指示
また、これらの情報伝達に関して、高齢者、障害者、外国人、乳幼児その他のいわゆる災害弱者及び一時滞在者に対する十分な配慮が重要である。
(2)防災業務関係機関相互の情報連絡設備
緊急時においては、原子力事業者、国、地方公共団体等の関係機関の情報連絡に支障が生じることが考えられる。このため。これらの機関等の情報連絡網については、
専用回線の設置など多様な手段を用意し、緊急時に必要な通信連絡が迅速かつ的確に
行えるようにしておくことが必要である。
また、原子力事業者、国、地方公共団体等の関係機関相互の情報連絡は、技術的あ
るいは専門的な事項が多く、口頭による連絡では正確性に欠ける場合があることや図
面、地図及び表を用いての情報伝達が必須と予想されることから、ファクシミリの整
備が必要である。さらに、より効果的な情報伝達のために、テレビ会議システム等の
技術の進歩に応じた情報機器も導入していく必要がある。
(3)防災業務関係者が必要とする防災資機材等
緊急時において、緊急時モニタリング及ぴ周辺住民の避難誘導等に従事する防災業
務関係者が必要とする資機材については、個人の被ばく線量を正しく把握するための
個人用線量計(ポケット線量計、アラームメータ等)、被ばくを低減するための防護
マスク及び安定ヨウ素剤等が必要である。
また、屋外活動を円滑かつ有効なものとするため携帯電話をはじめとする無線機器
及ぴ輸送手段の確保が必要である。
(4)緊急時モニタリングに関する設備及び機器
緊急時において周辺環境の放射性物質又は放射線の放出に関する情報を得るために
は、緊急時モニタリングに関する体制、設備及ぴ機器の整備が必要である。詳細につ
いては、第4章で述べるが、緊急時モニタリングの円滑な実施のためには、体制及び
実施計画の整備のほか、モニタリングポスト等の各種計測機器、連絡手段としての携
帯電話等の整備が必要である。
(5)緊急時予測支援システムの整備・維持
気象情報と放出源情報を入力することによって、迅速に放射能の影響が予測できる
SPEEDIネットワークシステム、原子力事業者から送られる施設の運転情報等を
もとに、施設の状態予測等を行う緊急時対策支援システム(ERSS:Emergency
Respnse Suppot System)等の整備を進めることが重要である。また、あらかじめ、
国、地方公共団体、原子力事業者等の問で十分に協議し、平常時から各種システムの
ネットワーク化や、緊急時の際の協力体制を整えておくことが必要である。
(6)緊急被ばく医療設備、資機材等
緊急被ばく医療設備、資機材等については、第6章に詳細に述べるが、整備すべき
ものとして、一般的な救急医療に関する適切な施設及び設備の確保のほかに、汚染の
程度や被ぱく線量を測定するための放射線測定器、除染、被ぱく管理及び汚染拡大を
防止するための設備、資機材等が必要である。
緊急時における災害応急対策の円滑かつ有効な実施のため、防災業務関係機関はそれ
ぞれの業務に関する防災計画あるいは実施細目等を有していなけれぱならない。また、
国、地方公共団体、原子力事業者等の関係機関においては、あらかじめ定められたそれ
ぞれの場所に原子力防災対策上必要とされる資料を常備しておくこととともに、これら
の機関が共有すべき資料は、オフサイトセンターにも常備しておくことが重要である。
さらに資料は、常に最新のものに更新しておくことが重要であり、そのための仕組みを
構築しておく必要がある。これら必要である資料の概略について以下に述べる。
@組織及び体制に関する資料
(イ)原子力事業者を含む防災業務関係機関の緊急時対応組織に関する資料
(人員、配置、指揮命令系統、関係者名リストを含む。)
(ロ)緊急時通報連絡体制に関する資料
A杜会環境に関する資料
(イ)種々の縮尺の周辺の地図
(ロ)周辺地域の人口、世帯数等に関する資料(原子力事業所からの方位、距離別、季
節的な人ロ変動に関する資料を含む。)
(ハ)周辺の道路、鉄道、ヘリポート、空港等輸送交通手段に関する資料(道路の幅
員、路面状況及び交通状況、時刻表、滑走路の長さ等の情報を含む。)
(二)避難場所及び屋内退避に適するコンクリート建家に関する資料(位置、収容能力
等のデータを含む。)
(ホ)周辺地域の特殊施設(幼稚園、学校、診療所、病院、刑務所等)に関する資料
(原子力事業所からの方位、距離についての情報を含む。)
(へ)緊急時医療施設に関する資料(位置、対応能力、収容能力等の情報を含む。)
B放射性物質又は放射線による影響推定に関する資料
(イ)原子力施設関係資料
(ロ)周辺地域の気象資料(施設及び周辺測点における風向、風速及び大気安定度の季
節別及び日変化の情報)
(ハ)線量推定計算に関する資料
(二)平常時モニタリング資料
(ホ)緊急時モニタリング資料
(へ)飲食物に関する資料(飲料水、農畜水産物に関する情報)
オフサイトセンターは、原子力緊急事態が発生した場合に、現地において、国の原子
力災害現地対策本部や都道府県及び市町村の災害対策本部などが、原子力災害合同対策
協議会を組織し情報を共有しながら、連携のとれた応急対策を講じていくための拠点と
なるものであり、その機能は極めて重要である。本施設については、原子力災害対策特
別措置法において、国が地方公共団体、原子力事業者の意見を聴いて、あらかじめ指定
することになるが、関係者が参集しやすい場所にあること、情報通信機器が整備されて
いること、一定以上の広さを有していること等が重要である。
オフサイトセンターにおいては、施設の状況の把握、モニタリング情報の把握、医療
関係情報の把握、住民避難・屋内退避状況の把握等の機能別に分けたグループにそれぞ
れ職員を配置することにより、継続的に必要な情報を集約、共有し、国の現地本部長が
主導的に、それぞれが行う緊急事態応急対策について必要な調整を行うことにより、オ
フサイトセンターが連携のとれた対策の拠点として機能することが重要である。また、
周辺住民や報道関係者等に、整理された情報を適切に提供していくことも重要な機能で
ある。
さらに、オフサイトセンターは、緊急事態の際に迅速に使用できるよう、平常時か
ら、原子力防災専門官による活用、防災資料の管理、通信機器等のメンテナンスなどを
行うとともに、当該施設を活用した防災関係者の連絡会や防災訓練での利用を図ってい
くことが重要である。
核燃料輸送物は収納される放射能量等により、L型輸送物、A型輸送物、B型輸送物
等に区分されており、また、臨界安全性の確保が必要な輸送物は核分裂性輸送物として
区分されている。このうち、収納される放射能量が多いB型輸送物及び臨界安全性の確
保が必要な核分裂性輸送物については、国際原子力機関(IAEA)輸送規則に基づ
き、過酷な事故を想定した落下試験(9m、非降伏面落下)、耐火試験(800℃、30
分)、浸漬試験(深さ15m、8時間など)等の特別の試験条件が課されているため、
輸送中に事故が発生したとしても、これらの輸送物の健全性は基本的には確保されると
考えられる。
万一、放射性物質の漏えい又は遮へい性能が劣化するような事故が発生した場合に
は、原子力事業者及び原子力事業者から運搬を委託された者により、原子炉等規制法に
基づき、必要に応じて、救出、消火活動、立入制限区域の設定、汚染、漏えい拡大防止
対策、遮へい対策等の緊急時の措置が行われるとともに、国により、放射性物質輸送事
故対策会議の設置、国の職員及ぴ専門家の現地への派遣等が行われる。
これらの事故対策が迅速かつ的確に行われることにより、核燃料物質等の輸送時の事
故が、原子力緊急事態に至る可能性は極めて低いと考えられるが、万一原子力緊急事態
に至ることを想定したとしても、事故の際に対応すべき範囲が極めて狭い範囲に限定さ
れること、輸送が行われる都度に経路が特定され、原子力施設のように事故発生場所が
あらかじめ特定されないこと等の輸送の特殊性を鑑みれぱ、原子力事業者と国が主体的
に防災対策を行うことが実効的であると考えられる。
なお、核燃料物質等の輸送に係る仮想的な事故評価について付属資料2に示す。
| 施設の種類 | EPZのめやすの距離(半径) | |
| 原子力発電所、研究開発段階にある原子炉施設及び50MWより大きい試験研究の用に供する原子炉施設 | 約8〜10km | |
| 核燃料再処理施設 | 約5km | |
| 試験研究の用に供する原子炉施設(50MW以下) | 熱出力≦1kW | 約50m |
| 1kW<〃≦100kW | 約100m | |
| 100kW<〃≦10MW | 約500m | |
| 10MW<〃≦50MW | 約1500m | |
| 特殊な施設条件等を有する施設 | 個別に決定(※1) | |
| 加工施設及び臨界量以上の核燃料物質を使用する使用施設 | 核燃料物質(質量管理、形状管理、幾何学
的安全配置等による厳格な臨界防止策が講
じられている状態で、静的に貯蔵されてい
るものを除く。)を臨界量(※2)以上使
用する施設であって、以下のいずれかの状
況に該当するもの ・不定形状(溶液状、粉末状、気体状)、 不定性状(物理的・化学的工程)で取り 扱う施設 ・濃縮度5%以上のウランを取り扱う施設 ・プルトニウムを取り扱う施設 | 約500m |
| それ以外の施設 | 約50m | |
| 廃棄施設 | 約50m | |
※1:特殊な施設条件等を有する施設及びそのEPZのめやすの距離
日本原子力研究所JRR-4約1000m
日本原子力研究所HTTR約200m
日本原子力研究所FCA約150m
東芝NCA約100m
※2:臨界量は、水反射体付き均一U02F2又はPu(N03)4水溶液の最小推定臨界下限値か
ら導出された量を用いる。
ウラン(濃縮度5%以上)700g-235U
ウラン(濃縮度5%未満)1200g-235U
プルトニウム450g-239Pu
3-3具体的な地域防災計画の策定等に当たっての留意点 4-1目的等 4-2段階 4-3緊急時モニタリング体制 4-4準備事項 4-5モニタリング地点の決定 4-6第1段階のモニタリング 4-7第2段階のモニタリング
第5章災害応急対策の実施のための指針
5-1異常事態発生の際の通報基準及び緊急事態判断基準 5-2防護対策
地域防災計画(原子力災害対策編)を作成する範囲については、対象とする各原子力
施設ごとにEPZのめやすを基準として、行政区画、地勢等地域に固有の自然的、社会
的周辺状況等を勘案し、ある程度の増減を考慮しながら、具体的な地域を定める必要が
ある。
なお、これまで原子力発電所等が設置されている都道府県及び市町村において、地域
防災計画(原子力災害対策編)が作成されている範囲は、変更する必要はないと考えら
れる。また、事故の形態によっては、EPZの外側であってもなんらかの対応が求めら
れる場合も全くないとはいえないものの、その場合にもEPZ内における防災対策を充
実しておくことによって、十分に対応できるものと考えられる。
EPZのめやすは、十分に安全対策が講じられている原子力施設を対象に、あえて技
術的に起こり得ないような事態までを仮定して、さらに、十分な余裕を持って示してい
るものであり、万一の緊急時の対応においてもその事態の影響の規模に応じEPZ内
の一部の範囲において、あらかじめ準備された対策を重点的に講じることになると考え
られる。したがって、平常時において安全であることはもちろん、日常生活になんら支
障を及ぼすものではない。この点について原子力関係者が、周辺住民等の正しい理解が
得られるよう適切な情報提供等に努めることが重要である。
また、原子力災害対策特別措置法において、原子力事業者は防災業務計画を都道府
県、立地市町村と協議し、都道府県は、関係周辺市町村の意見を聴くこととされている
が、この場合、EPZ内の市町村の意見を聴くことがまず基本となると考えられる。
なお、施設のEPZが原子力事業所の敷地に包含される場合、事業所外の対応として
は、発生した事故の情報連絡、住民広報等の体制と周辺環境への影響の確認という観点
も含めた、ある程度のモニタリング体制を講じておけば十分であると考えられる。
第4章緊急時環境放射線モニタリング
原子力施設において、放射性物質又は放射線の異常な放出あるいはそのおそれがある
場合に、周辺環境の放射性物質又は放射線に関する情報を得るために特別に計画された
環境モニタリングを「緊急時モニタリング」といい、原子力緊急事態の発生時に、迅速
に行う第1段階のモニタリングと周辺環境に対する全般的影響を評価する第2段階のモ
ニタリングからなる。具体的な目的は以下のとおりであるが、@ABは、第1段階のモ
ニタリングに、CDEは、第2段階のモニタリングに区別される。
@原子力施設周辺の空間放射線量率及び周辺に放出された大気中の放射性物質(ヨウ
素、ウラン又はプルトニウム)の濃度の把握
A放射性物質の放出により影響を受けた環境試料中の放射性物質(ヨウ素、ウラン又
はプルトニウム)の濃度の把握
B周辺環境における予測線量の迅速な推定
C@について、対象とする核種を増やすなど、詳細な大気中の放射性物質の濃度の把
握
DAについて、対象とする核種を増やすなど、詳細な環境試料中の放射性物質の濃度
の把握
E周辺住民等が実際に被ばくしたと考えられる線量の評価
原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力事業者から通報があった段階では、平常
時のモニタリングを強化するとともに、原子力事業者から施設内の状況に関する情報を
入手し、事態の推移に応じて、緊急時モニタリングの準備を開始する必要がある。さら
に、原子力緊急事態の発生を示す事象が発生した場合、緊急時モニタリングを開始する
必要がある。
以下に、緊急時モニタリングに関する一般的な事項を述べる。
なお、詳細は「緊急時環境放射線モニタリング指針」(昭和59年原子力安全委員会
決定)によるものとする。
@第1段階のモニタリング
第1段階のモニタリングは、原子力緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべ
きものであり、この結果は、放出源の情報、気象情報及びSPEEDIネットワーク
システム等から得られる情報とともに、予測線量の推定に用いられ、これに基づいて
防護対策に関する判断がなされることとなる。したがってこの段階においては、何よ
りも迅速性が必要であり、第2段階で行われる測定ほどの精度は要求されない。
第1段階のモニタリングの主要な対象となる放射性物質又は放射線は、原子力施設
又は事故の形態に応じて、大気中における放射性の希ガス、ヨウ素、エアロゾル状態
のウラン、プルトニウム、中性子線及びガンマ線である。
A第2段階のモニタリング
第2段階のモニタリングは、第1段階のモニタリングで要求される迅速性より正確
さが必要となり、第1段階のモニタリングよりさらに広い地域につき、放射性物質又
は放射線の周辺環境に対する全般的影響を評価し、確認するために行われる。
第2段階のモニタリングにおいては、積算線量並びに環境中に放出された人体への
被ばく評価に必要となる放射性物質が対象となる。
なお、このモニタリングの結果は、各種防護対策の解除に用いられるとともに、風
評対策にも資するものである。
事故が発生した原子力事業所の周辺において、緊急時モニタリングを行うために、現
地災害対策本部の下に、モニタリングセンター及ぴ複数のモニタリングチームを組織す
ることとなる。また、センター長、チームの役割等をあらかじめ定めておく必要があ
る。モニタリングセンター及びモニタリングチームの備えるべき主な機能は以下のとお
りである。
(1)モニタリングセンター
@モニタリングセンター長を置き、そのもとで緊急時モニタリングの計画、立案を
行うとともに緊急時モニタリング作業の指揮及び総括を行う。
A緊急時モニタリングチームの編成、機材の分配等を行う。
B情報を収集し、環境放射能及び周辺住民等の放射線被ぱくの推定、評価を行い、
その結果を現地災害対策本部に迅速かつ的確に報告する。
(2)モニタリングチーム
@空間放射線量率の測定、大気中の放射性物質の濃度の測定、環境試料の採取、測
定等の緊急時モニタリング作業を実施する。
A緊急時モニタリングにより得られたデータをモニタリングセンターに迅速かつ的
確に報告する。
(1)緊急時にも対応できるよう、平常時のモニタリング体制を整備するとともに、携帯
可能な測定器等を準備しておくことが必要である。
(2)緊急時モニタリングについての情報連絡が迅速かつ的確に行われるために、次の地
点等の位置をあらかじめ符号を付し定めておく。
@空間放射線量率及び放射性ヨウ素等主要な大気中放射性物質のモニタリング地点
A環境試料のサンプリング地点
B積算線量の測定地点
C測定経路
(3)必要に応じ、SPEEDIネットワークシステムを平常時から適切に整備、維持及
び管理し、緊急時に備える。
(4)環境試料の分析又は精密測定を行う施設をあらかじめ定めておく。
(5)人員、測定機器等の運搬手段及び各モニタリングチーム等との通信連絡手段を確立
しておく。
(6)飲料水の供給システム(水源、水道の系統、井戸等)を明らかにしておく。
緊急時モニタリングを行うべき地域又は地点を迅速に選定するための予測作業の内容
は、以下のとおりである。
(1)予測作業の内容
@最大空間放射線量率とその出現地点
A大気中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム最大濃度とその出現地点
B大気中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム濃度及び空間放射線量率の地域
分布
C線量の分布とその時間的変化
なお、事故等の形態に応じ放出された放射性物質を限定できる場合は、ヨウ素、ウラ
ン又はプルトニウムのうち対象となる放射性物質について、予測作業を行うこととな
る。
(2)予測に必要な(又は参考とすべき)情報
@放出源情報とその時間的変化
A気象情報と予測される変化
Bモニタリングポスト等の情報
CSPEEDIネットワークシステムの情報
第1段階のモニタリングにおける測定項目、測定又は試料採取の地点並びに測定方法
は、以下のとおりである。
(1)測定項目
@空間放射線量率
A大気中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム濃度
B環境試料(飲料水、葉菜、原乳等)中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム
濃度
(2)測定・採取の地点
@大気中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム最大濃度及び最大空間放射線量
率の出現予測地点数点
A予測される大気中の放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウムの最大濃度地点を中
心として約60°セクター内数点
B風下方向の人ロ密集地帯(地点数はその大きさにより適宜決める。)
(3)測定方法
@空間放射線量率の測定
(イ)ガンマ線の測定
a)測定器・電離箱式サーベイメータ
・GM計数管式サーベイメータ
・NaIシンチレーション式サーベイメータ
b)測定範囲0.1μSv/h〜数mSv/h又はO.1μGy/h〜数mGy/h
c)測定間隔0.5h〜1h
(注)緊急時の際には、ガンマ線については、1Gy/h=1Sv/hとする。
なお、常設のモニタリングポストに加えて予測される最大濃度地点以内の約60°
セクターで、可搬型ガンマ線測定器を設置して連続測定することも有効である。
(ロ)中性子線サーベイメータによる測定
中性子線が放出されている可能性がある場合には、中性子線サーベイメータを
用い、同心円上の複数地点で測定を行う。
A大気中の放射性ヨウ素濃度の測定
(イ)活性炭カートリッジ又は活性炭入りろ紙等を装備した可搬型集塵器により大気
試料の採取を行いNaIシンチレーション式サーベイメータ又はGM計数管式サ
ーベイメータにより測定する。
(ロ)さらに、必要に応じ、より正確な濃度を求めるために、上記試料のうち放射能
濃度の高い試料数種をガンマ線スペクトロメータで測定し、それによって得られ
た放射性ヨウ素濃度の値をもとに、(イ)の方法による値を補正する。
B環境試料中の放射性ヨウ素濃度の測定
環境試料を採取しNaIシンチレーション式サーベイメータにより簡易測定し、
さらに、必要に応じ、より正確な濃度を求めるために、上記A(ロ)と同様の測定を行
う。
C大気中のウラン又はプルトニウム濃度の測定
(イ)ろ紙等を装備した可搬型集塵器により大気試料の採取を行いZnSシンチレー
ション式サーベイメータにより測定する。
なお、この方法は、もともと大気中に存在するラドン娘核種も、ろ紙に捕集さ
れるため、ウラン又はプルトニウムの濃度が低い場合は適さない。
(ロ)より正確な濃度を求めるために、上記試料のうち放射能濃度の高い試料数種を
アルファ線スペクトロメータにより測定する。さらに、必要に応じ、得られたウ
ラン又はプルトニウム濃度の値をもとに、(イ)の方法による値を補正する。
D環境試料中のウラン又はプルトニウム濃度の測定
環境試料を採取しZnSシンチレーション式サーベイメータによりアルファ線表
面汚染密度を測定し、さらに、正確な濃度を求めるために、上記試料のうち表面汚
染密度の高い試料について、アルファ線スペクトロメータを用いて放射能濃度を測
定する。
第2段階のモニタリングにおける測定項目、測定又は試料採取の地点並びに測定方法
等は以下のとおりである。
(1)測定項目
@空問放射線量率
A大気中の放射性物質の濃度
B環境試料中の放射性物質の濃度
C積算線量
(2)測定・採取の地点
第1段階のモニタリングの結果を参考とし、必要と考えられる地域又は地点
(3)測定方法
平常時の環境モニタリングで使用されている測定方法を準用するほか、必要に応じ
て可搬型のガンマ線スペクトロメータを使用する。
環境試料中のウラン又はプルトニウム濃度の測定は、化学分離後、誘導結合プラズ
マ質量分析装置(ICP-MS)又はアルファ線スペクトロメータを使用する。
(4)経時変化の追跡
環境中へ放出された放射性物質の状況が、時間的にどのように変化しているかを追
跡するため、平常時のモニタリングの対象となっている環境試料のうち、経時変化の
追跡が必要と考えられる試料の採取及び測定を一定の時間間隔で行う。この場合の時
間間隔のめやすは、1日〜1週間程度である。
(5)積算線量の測定
熱ルミネセンス線量計(TLD)等による測定結果及び連続モニタの情報を中心に
他の測定の結果を参考にして、周辺住民等が実際に被ばくした積算線量を推定する。
原子力災害対策特別措置法において、原子力施設の特性、防護活動との関係等を踏ま
え、すべての原子力施設に適用できるように原子力防災活動の準備や開始に関する基準
を設定している。
(1)関係者への通報基準及びそれに該当する事象への対応
@通報基準の内容
(イ)原子力事業所の境界付近において、空間放射線量率にっいて1地点で10分以上
5μSv/h以上又は2地点以上で同時に5μSv/h以上(ガンマ線が1μSv/
h以上の場合は、中性子線も測定し、それらの合計の線量が5μSv/h以上。な
お、落雷によるものを除く。)
(ロ)排気筒等の通常放出部分で、拡散した後の放射能水準が、原子力事業所の境界
付近において5μSv/h以上に相当するような放射性物質の放出等(累積放出量
で管理している場合には、一事象により50μSv以上に相当するような放出)
(ハ)火災、爆発等が生じ、管理区域外の場所で、50μSv/h以上の空間放射線量
率又は5μSv/h以上に相当するような放射性物質の放出等
(二)原子力事業所外運搬中に事故が生じ、輸送容器から1m離れた地点で100μ
Sv/h以上の空問放射線量率又は放射性物質の漏えい等
(ホ)臨界事故の発生又はそのおそれがある状態
(へ)原子力施設の特性を踏まえた個別の事象であって、軽水炉において制御棒の挿
入による原子炉の停止ができないこと等
この基準の詳細及び設定に当たっての技術的側面からの検討内容を付属資料4に
示す。
A通報基準に該当する事象が発生した場合の対応
(イ)原子力事業者の対応
原子力事業者は、国、都道府県知事及び市町村長等に迅速に通報するととも
に、周辺住民等への影響に関する情報の把握や原子力災害の発生又は拡大防止の
ために必要な応急措置を実施し、さらに、事故の経過を的確にこれらの機関に連
絡することが必要である。
(ロ)国の対応
国は、原子力防災専門官等を通じて原子力事業所における事故情報等を迅速に
収集するとともに、職員や日本原子力研究所等の専門家を現地に派遣することが
必要である。また、事故の進展状況に応じて、関係省庁間での事故対策連絡会議
を開催するなどにより関係者間での情報の共有化を図りつつ、対応策について検
討を行うなど警戒態勢を整えていく必要がある。
(ハ)地方公共団体の対応
都道府県及び市町村は、原子力防災専門官の協力も得つつ情報収集を行い、事
故の進展状況に応じて警戒態勢を整える必要がある。また、周辺への影響の把握
という観点から、平常時のモニタリングを強化するとともに、緊急時モニタリン
グの準備を開始する。
なお、この段階は、あくまで原子力災害の発生又は拡大の防止のために必要な準
備の段階であり、関係機関においては、住民に無用な不安、混乱を与えることがな
いよう、適切に対応することが重要である。また、初期段階における現地対応とし
て、原子力防災専門官の役割は重要であり、あらかじめ業務内容等について定めて
おく必要がある。
(2)原子力緊急事態及び当該事態への対応
@原子力緊急事態の判断基準の内容
(イ)原子力事業所の境界付近において、空間放射線量率について1地点で10分以上
500μSv/h以上又は2地点以上で同時に500μSv/h以上(ガンマ線が
5μSv/h以上の場合は、中性子線も測定し、それらの合計の線量が500μS
v/h以上。なお、落雷によるものを除く。)
(ロ)排気筒等の通常放出部分で、拡散した後の放射能水準が、原子力事業所の境界
付近において500μSv/h以上に相当するよう存放射性物質の放出等(累積放
出量で管理している場合には、一事象により5mSv以上に相当するような放
出)
(ハ)火災、爆発等が生じ、管理区域外の場所で、5mSv/h以上の空問放射線量率
又は500μSv/h以上に相当するような放射性物質の放出等
(二)原子力事業所外運搬中に事故が生じ、輸送容器から1m離れた地点で10mS
v/h以上の空間放射線量率又は放射性物質の漏えい等
(ホ)臨界事故の発生
(へ)原子力施設の特性を踏まえた個別の事象であって、軽水炉においてホウ酸水を
注入する等の操作によっても原子炉の停止ができないこと等
この基準の詳細及ぴ設定に当たっての技術的側面からの検討内容を付属資料4に示
す。
A原子力緊急事態への対応
(イ)原子力事業者の対応
原子力事業者は、原子力災害の発生又は拡大の防止のために緊急事態応急措置
を実施することが必要である。
(ロ)国及び地方公共団体の対応
国は、原子力緊急事態宣言を発出し、原子力災害対策本部を設置するととも
に、地方公共団体でも災害対策本部を設置し、応急対策を実施することとなる。
その際、オフサイトセンター内に、国の現地対策本部、都道府県及び市町村の
対策本部等からなる原子力災害合同対策協議会を組織して、情報を共有しつつ、
連携して応急対策を実施し、周辺住民等への放射線の影響をできるだけ低減化す
るとともに、無用な不安、混乱を与えることがないよう、適切に対応することが
重要である。
B原子力緊急事態の判断基準等に関する留意事項
国が原子力災害対策本部を立ち上げる基準には、原子力事業所の境界付近におけ
る異常な空間放射線量率と、施設内の異常な事象の双方があり、現実的には境界付
近の異常な空間放射線量率よりも施設内の異常な事象の発生が先に検知されること
が想定される。この観点からも、原子力事業者は、施設内の異常な事象を確実に検
知し、迅速に通報することが必要である。
また、すべての原子力施設に適用される通報基準、緊急事態の判断基準が明確化
されたことを踏まえ、国、地方公共団体等の関係機関が連携をとりつつ、整合性の
ある対応をとっていくことが重要である。したがって、これら関係機関が、今後の
原子力防災計画の策定において、かかる基準の内容及び対応策を反映していくこと
が重要であると考えられる。
放射性物質又は放射線の異常な放出が発生した場合に、精神的負担や経済的負担も考
慮しつつ、周辺住民等の被ぱくをできるだけ低減するために講ずる措置を防護対策とい
う。
防護対策には、屋内退避、コンクリート屋内退避、避難、安定ヨウ素剤予防服用、食
物摂取制限等が考えられるが、ここでは、主な防護対策についての基本的な考え方を示
す。防護対策の指標について参考とした資料を、付属資料5に示す。
@屋内退避について
屋内退避は、通常の行動に近いこと、その後の対応指示も含めて広報連絡が容易で
ある等の利点があると同時に、建家の有する遮へい効果及び気密性等を考慮すれば防
護対策上有効な方法である。特に予測線量が大きくない場合又は放射性物質の拡散時
間が防災業務関係者の動員、指示及ぴ周辺住民等の移動の時間に比べて短い場合に
は、動揺、混乱等をもたらすおそれの高い避難措置よりも優先して考えるべきもので
ある。
Aコンクリート屋内退避について
コンクリート屋内退避は、コンクリート建家の遮へい効果による外部全身被ばくの
低減及び建家の気密性による甲状腺被ばく等の低減が相当期待できることから、防護
対策として重要視されるべきである。コンクリート屋内退避が必要となった場合に混
乱を起こすことなく対応できるように、地域防災計画の作成に当たり、具体的対応策
存検討しておく必要がある。
B避難について
防護対策の中でも、避難にっいては、特に慎重な配慮が必要である。詳細な実施計
画に従い実施したとしても、心理的な動揺、それによる混乱等のおそれが高いという
ことが想定される。したがって、一般に多数の住民等の避難を考える場合には、対策
の結果生ずる影響について十分に検討する必要がある。避難による被ばくの低減化が
有効であるのは、放射性物質の大量の放出までに十分な時間的余裕があり、長期間放
出が予想され、しかも避難によらなければ相当な被ばくを避け得ない場合である。放
射性物質の放出が短時間で終ると予測される場合は、必ずしも避難が最善の方策とは
考えられない。
また、原子力施設から直接放出される中性子線及びガンマ線の影響が大きい場合
は、放射線量が原子力施設からの距離のほぼ2乗に反比例して減少すること及びその
影響を受ける範囲が限定されていることから、避難による混乱を考慮しても、避難は
検討されるべき重要な手段である。
防護対策にあって、避難は輸送手段、経路の確保等種々の要素を考慮した上で、周
辺住民等に適切かつ明確な指示を与えて実施すべきものである。この際、避難に当た
っては自力避難が困難な災害弱者に対する配慮も必要である。
C安定ヨウ素剤予防服用について
放射性ヨウ素は、人が吸入又は汚染された飲食物を摂取することにより、身体に取
り込まれると、甲状腺に選択的に集積するため、放射線の内部被ばくによる甲状腺が
ん等の晩発性影響を発生させる可能性がある。この内部被ばくに対して、安定ヨウ素
剤を予防的に服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を防ぐことができ
る。この際、安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被ばくや希ガス等に
よる外部被ぱくに対して、放射線影響を防護する効果は全くないことに留意する。
この防護対策を実施するに当たっては、放射性物質の放出状況を踏まえ、屋内退避
や避難等の防護対策とともに判断する必要がある。周辺住民等に対する安定ヨウ素剤
に係る防護対策については、その詳細を付属資料6に示す。
D飲食物摂取制限について
摂取制限措置を実施するまでには、時間的余裕があると考えられるので、代替飲食
物の供給等について対策を講じておく必要がある。
E立入制限措置について
放射性物質又は放射線が異常に放出されるかあるいはそのおそれがある場合には、
以下のとおり、立入制限の措置を講ずる必要がある。
(イ)放射性物質又は放射線による無用の被ばくを避けるために特定の区域への立入を
制限すること。
(ロ)周辺住民等の避難、防災業務関係者の活動及び応急対策用資機材等の輸送のため
に経路を確保するなど、応急対策の円滑な実施のために特定の区域への無用の立入
を制限すること。
F防災業務関係者の防護措置
原子力災害の応急対策及ぴ災害復旧に関係する者であって、ある程度の被ばくが予
想される防災業務関係者については、個人線量計(ポケット線量計、アラームメータ
等)を、また、防災業務に応じて、被ばくを低減するための防護マスクを配布すると
ともに、安定ヨウ素剤を予防的に服用させる。防災業務関係者の安定ヨウ素剤予防服
用については、付属資料7に示す。さらに、輸送手段、連絡手段の確保が必要であ
る。
防災業務関係者の放射線防護に係る指標は、放射線業務従事者に対する考え方を参
考にして、以下のとおりとすることを提案する。また、事故が発生した原子力事業所
の放射線業務従事者については、法令に定められている線量限度を適用するものとす
る。なお、防災業務関係者の放射線防護に係る指標についての参考資料を、付属資料
8に示す。
(イ)災害応急対策活動及ぴ災害復旧活動を実施する防災業務関係者の被ぱく線量は、
実効線量で50mSvを上限とする。
(ロ)ただし、防災業務関係者のうち、事故現場において緊急作業を実施する者(例え
ぱ、当該原子力事業所の放射線業務従事者以外の職員はもとより、国から派遣され
る専門家、警察関係者、消防関係者、自衛隊員、緊急医療関係者等)が、災害の拡
大の防止及び人命救助等緊急かつやむを得ない作業を実施する場合の被ばく線量
は、実効線量さ100mSvを上限とする。また、作業内容に応じて、必要があれ
ぱ、眼の水晶体については等価線量で300mSv、皮膚にっいては等価線量で1
Svをあわせて上限として用いる。
なお、これらの防災業務関係者の放射線防護に係る指標は上限であり、防災活動に
係る被ぱく線量をできる限り少なくする努力が必要である。
特に女性については、上記指標にかかわらず、胎児防護の観点から、適切な配慮が
必要である。
G各種防護対策の解除
これまで述べてきた各種の防護対策の解除には慎重な配慮を要する。即ち放出源か
らの放出が終了したとしても影響を受けた区域は汚染されている可能性もあり、汚染
物が影響を受けていない区域に搬出されるおそれなどがあるからである。したがっ
て、緊急時モニタリング等による地域の調査等の措置が行われた後、専門家の判断に
したがって各種対策の解除を行うことが重要である。
| 予測線量(単位:mSv) | 防護対策の内容 | |
| 外部被ばくによる実効線量 | ・放射性ヨウ素による小児甲状腺の等価線量 ・ウランによる骨表面又は肺の等価線量 ・プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量 | |
| 10〜50 | 100〜500 | 住民は、自宅等の屋内へ退避すること。その際、窓等を閉め気密性に配慮すること。 ただし、施設から直接放出される中性子線又はガンマ線の放出に対しては、指示があれば、コンクリート建家に退避するか、又は避難すること。 |
| 50以上 | 500以上 | 住民は、指示に従いコンクリート建家の屋内に退避するか、又は避難すること。 |
注)1.予測線量は、災害対策本部等において算定され、これに基づく周辺住民等の防
護対策措置についての指示等が行われる。
2.予測線量は、放射性物質又は放射線の放出期間中、屋外に居続け、なんらの措
置も講じなければ受けると予測される線量である。
3.外部被ばくによる実効線量、放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量、ウランに
よる骨表面又は肺の等価線量、プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量が同
一レベルにないときは、これらのうちいずれか高いレベルに応じた防護対策をと
るものとする。
なお、上記指標を検討するに当たり参考とした資料を付属資料10、11に示す。
(2)安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標
安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策は、屋内退避や避難の防護対策とともに、そ
の実効性を高める必要があること、さらに、安定ヨウ素剤予防服用に関する国際機関
及び各国における提案を考慮し、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標とし
て、全ての対象者に対し包括的に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線
量100mSvを提案する。
(3)飲食物の摂取制限に関する指標
飲食物摂取制限に関する放射性元素として、放射性プルームに起因するヨウ素、ウ
ラン及びプルトニウムを選定するとともに、旧ソ連チェルノブイル事故時の経験を踏
まえてセシウムを選定した。そして、これらの核種による周辺住民等の被ばくを低減
するとの観点から実測による放射性物質の濃度として表3<とおり飲食物摂取制限に
関する指標を提案する。
なお、この指標は災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置を講ずることが適切であるか否かの検討を開始するめやすを示すものである。
表3飲食物摂取制限に関する指標
| 対象 | 放射性ヨウ素混合核種の代表核種:131T) |
| 飲料水 | 3×102Bq/Kg以上 |
| 牛乳・乳製品 | |
| 野菜類(根菜、芋類を除く。) | 2×103Bq/Kg以上 |
| 対象 | 放射性セシウム |
| 飲料水 | 2×102Bq/Kg以上 |
| 牛乳・乳製品 | |
| 野菜類 | 5×102Bq/Kg以上 |
| 穀類 | |
| 肉・卵・魚・その他 |
| 対象 | ウラン |
| 飲料水 | 20Bq/Kg以上 |
| 牛乳・乳製品 | |
| 野菜類 | 1×102Bq/Kg以上 |
| 穀類 | |
| 肉・卵・魚・その他 |
| 対象 | プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種 (238Pu、239Pu、240Pu、242Pu、241Am、242Cm、243Cm、244Cmの放射濃度の合計) |
| 飲料水 | 1Bq/Kg以上 |
| 牛乳・乳製品 | |
| 野菜類 | 10Bq/Kg以上 |
| 穀類 | |
| 肉・卵・魚・その他 |
(注)乳児用として市販される食品の摂取制限の指標としては、ウランについては20Bq/
kgを、プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種については1Bq/kgを適用す
るものとする。ただしこの基準は、調理され食事に供される形のものに適用されるものと
する。
なお、上記の対象物中の放射能濃度の定量に当たっては、以下のものを参照することを
提案する。
・放射性ヨウ素:文部科学省測定法シリーズ15「緊急時における放射性ヨウ素
測定法」
・放射性セシウム:同シリーズ7「ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペ
クトロメトリー」及び同シリーズ24「緊急時におけるガンマ
線スペクトロメトリーのための試料前処理法」
・ウラン:同シリーズ14「ウラン分析法」
・プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種:同シリーズ12「プルトニウム分析法」
同シリーズ21「アメリシウム分析法」及び同シリーズ22
「プルトニウム・アメリシウム逐次分析法」
また、上記濃度の算出についての考え方を付属資料12に示す。
第6章緊急被ばく医療
6-1緊急被ばく医療の基本的考え方 6-2原子力緊急事態の発生時における緊急被ばく医療
(2)各組織の役割 6-3緊急被ぱく医療体制 図1緊急被ぱく医療体制の概念
6-4緊急被ばく医療における国、地方公共団体、原子力事業者等の責務 6-5緊急被ばく医療活動のための要件
緊急被ばく医療活動のためには、以下の要件が求められる。 付属資料
目次
付属資料1 通報連絡様式
付属資料2 核燃料物質輸送に係る仮想的な事故評価について
付属資料3 EPZについての技術的側面からの検討
付属資料4 原子力施設等の異常時の通報基準、緊急事態の判断の基準について
付属資料5 防護対策指標について
付属資料6 周辺住民等に対する安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について
付属資料7 防災業務関係者の安定ヨウ素剤予防服用について
付属資料8 防災業務関係者の放射線防護に係る指標について
付属資料9 SPEEDIネットワークシステムを用いた予測線量の算定について
付属資料10 屋内退避等の有効性にっいて
付属資料11 空間放射線量率分布及び濃度分布の特徴
付属資料12 飲食物摂取制限に関する指標について
付属資料13 緊急被ばく医療体制の概要
付属資料14 各医療体制における設備、資機材等
付属資料15 本指針の改訂の経過
(付属資料2)
核燃料物質等の輸送に係る仮想的な事故評価について
(付属資料3)
EPZについての技術的側面からの検討
「第3章防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲」において、防災対策を重点的に
充実すべき地域の範囲(EPZ)として、各原子力施設の種類毎に、施設を中心とした距
離のめやすを示し、具体的な防災計画を作成する地域にっいては、これを基準に人口分布、
行政区域、地勢等を考慮して定めることを提案した。 第1図 外部全身線量の相対値ー風下軸距離
第2図 小児甲状腺の等価線量の相対値-風下軸距離
第3図 外部全身線量及び小児甲状腺の等価線量(BWR) 第4図 外部全身線量及び小児甲状腺の等価線量(BWR) 第5図 外部全身線量及び小児甲状腺の等価線量(PWR)
第7図中.高出炉用の放出継続時間(24時間)において、防護対策指標の下限値を与
える放出量(放出高さ別)
外部全身線量が10mSvとなる時の希ガスのγ線放出量(0.5MeV換算値)
第8図中.高出炉用の放出継続時間(24時間)において、防護対策指標の下限値を与
える放出量(放出高さ別)
小児甲状腺の等価線量が100mSvとなる時のヨウ素の放出量(T-131等価量)
第9図 低出炉用の放出継続時間(1時間)において、防護対策指標の下限値を与
える放出量(放出高さ別)
外部全身線量が10mSvとなる時の希ガスのγ線放出量(0.5MeV換算値)
第10図 低出炉用の放出継続時間(1時間)において、防護対策指標の下限値を与
える放出量(放出高さ別)
小児甲状腺の等価線量が100mSvとなる時のヨウ素の放出量(T-131等価量)
V.再処理施設のEPZについて
IV .核燃料施設等のEPZについて
これらの結果は、施設から風下距離500mにおいて、外部全身線量についての防護対
策指標の下限値である10mSvを下回るが、小児甲状腺の等価線量についての防護対策
指標の下限値である100mSvを計算上は超え、120mSv程度となることを示している。
(付属資料4)
原子力施設等の異常時の通報基準、緊急事態の判断の基準について
1地点で10分以上5マイクロシーベルト毎時以上を検出するか、あるいは2
地点以上で5マイクロシーベルト毎時以上を検出する場合(ただし、落雷によ
る検出は除く)
(説明)
※γ線については1グレイ=ユシーベルトとするのが適当。
(1)-2測定方法
モニタリングポストは、γ線の測定を行うものとし、必要に応じ、可搬式の中
性子線測定装置による測定を行う。
(説明) (1)-3測定設備の設置台数
2台以上とする。
(説明) @排気筒等の通常放出部分で、一定以上の放射性物質が放出された場合
A管駆域で火災、爆発等があり、排気筒等の通常放出部分以外の部分の閉じ
込め機能の異常が発生し、一定以上の放射性物質又は放射線が放出された場
合(輸送容器の場合は容器外に異常な放出があった場合)
(説明) @排気筒等の通常放出部分での放射性物質の放出
基本的な考え方としては、周辺監視区域外での放射性物質の濃度限度(年間1ミ
リシーベルト)に達するような放射性物質の放出力が排気筒等で検出される状況をべ
一スとして、放射性物質の種類に応じ、以下のような基準を導入する。
<@一1排気(気体等)> ※1 放出濃度を測定しているものには、希ガス等があり、累積放出量を測定し
ているものには、ウラン、プルトニウム、ヨウ素等があり、これらの測定形
態に応じて基準を適用することとなる。ただし、ヨウ素については、濃度測
定の場合もあり、この場合には放出濃度による管理を適用することができる。 <@-2排水> A火事爆発等に起因して閉じ込め機能が喪失し・放射性物質又は放射線が放出
基本的な考え方としては、アスファルト固化施設の爆発等の状況におし'て・管理
区域外の部分(管駆域周辺あるいは輸送容器周辺)において・一定以上の放射線
又は放射性物質が放出されたこととする。
※1 当該放射線量が10時間継続しても、事業所内の管理区域周辺において
0.5ミリシーベルト程度である。
※1 火災、爆発等を伴った管理区域外での 排水の漏えいについては、かかる事
象が単独で発生することは想定しがたく、仮に発生しても気体放出を伴って
いることが想定されること、さらには敷地外への広がりが極めて小さい排水
の漏えいのみの事象は原子力災害への発展の可能性という観点からは対象と
する必要がないと考えられることから、ここでは除外する。 ※1 放射線量については、通常輸送時の条件である、「容器から1m離れた地
点で100マイクロシーベルト毎時」を基準とし、放射性物質については、
通常輸送時又は一般試験時の条件を超える「放射性物質の漏えいがあったこ
と又はそのおそれ」を採用する(B型輸送容器では一定値が許容されている
が、漏えいがあった場合には通報を行う。)
B臨界事故またはそのおそれ
形状や質量管理が物理的に機能しない状態となり、臨界が起きる蓋然性が高くな
ることは、事象として明確であり、(実際に発生するかどうかは別として、)突発
的に臨界が起きるような場合には、既存のγ線のエリアモニタ等原子力事業者の警
報装置の運用等で検知・把握し、通報する。 C施設の管理施設の不能
@からBの事象が検知されない場合であっても、原子炉制御室等(※1)につい
ては、施設の運転が不能となることにより放射性物質又は放射線の放出の危険性が
高まるものとして規定する。
※1 施設の技術基準上、制御室が設けられている原子炉、再処理施設の当該施
設を対象とする。
D施設の固有の事象
原子力発電所等においては、@、Aで定める直接的な放出事象に至る前に、止める機能、
冷やす機能の喪失による炉心の溶融又は使用済燃料からの放射線等の放出
へのおそれを確実に検知できる事象を個別の事象として設定する。また、この場合、
多重防護システムがあるため、単一故障ではない事象とする。なお、これらの事象
は、いずれかの段階で@に定める事象となる可能性を有するものである。 研究炉については、原子炉の非常停止が必要な場合に全ての原子炉停止系による
非常停止に失敗すること、または全ての原子炉冷却系による冷却に失敗する主と
する(電源喪失については、これが起きた場合であっても、停止系又1ま冷却系が機
能していることから、通報事象としては規定しない)。 1地点で10分以上500マイクロシーベルト毎時以上を検出するか、あるい
は2地点以上で500マイクロシーベルト毎時以上を検出する場合(ただし、
落雷による検出は除く)
(説明) ※1 この線量率は、20時間継続した場合に敷地境界付近において防護対策を
考慮すべき10mSvに達するレベル
(2)事象 @排気筒等の通常放出部分で、一定以上の放射性物質が放出された場合 (説明) @排気筒等の通常放出部分の放射性物質の放出
排気筒の放出でこの濃度が20時間継続した場合に、最大となる地点で10ミリ
シーベルトに相当するレベルである、500マイクロシーベルト毎時に該当する基
準とする。なお、実際の風向、風速等を考えれば、さらに十分な時間的余裕がある
ものと考えられる。 A火事、爆発等に起因して閉じ込め機能が喪失し、放射性物質又は放射線が放出
原子力事業所の放射性物質については、事業所内の管理区域周辺で当該濃度が2
0時問継続した場合に、当該場所で10ミリシーベルトとなるレベルである、50
0マイクロシーベルト毎時に該当する基準とする。なお、実際の拡散はさらに見込
めることから、住民の防護活動に十分な余裕があるものと考えられる。
(付属資料5)
防護対策指標について
屋内退避及び避難等に関する指標を定めるに当たっては下記資料等を参考とした。
(参考資料)
@国際放射線防護委員会 A国際原子力機関
(注:1rem=10mSv)
@アメリカの防護対策指標
Aイギリスの防護対策指標
Bドイツの防護対策指標
Cフランスの防護対策指標
(付属資料6)
周辺住民等に対する安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について
広島、長崎の原爆、マーシャル諸島における核爆発実験、チェルノブイリ原子力発電所事故等の調査結果及びヨウ素と人に係る生理学的、病理学的な知見を踏まえ、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくに対する防護対策について、基本的な考え方を以下に示す。
(1)原子力災害時に放出された放射性ヨウ素の吸入による甲状腺への影響が著しいと予測された場合、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を効果的に抑制し、甲状腺への障害を低減できることが報告されている。このため、災害対策本部の判断により、屋内退避や避難の防護対策とともに、安
定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。
(2)放射性被ばくによる甲状腺への影響は、甲状腺がんと甲状腺機能低下症がある。
被ばく後の甲状腺がんの発生確率は、乳幼児の被曝者で増加する場合があるが、40歳以上では増加しないため、年齢に応じて、安定ヨウ素剤の服用対象を定める必要がある。特に、新生児、乳幼児等には、安定ヨウ素剤服用の措置について最優先とすべきである。これに対し、甲状腺機能低下症は閾線量以上の被ばくで生じるため、甲状腺機能低下症に対する安定ヨウ素剤予防服用については、しきい線量の概念を導入することとする。
(3)安定ヨウ素剤の服用による副作用は稀であるが、副作用を可能な限り低減させるため、年齢に応じた服用量を定めるとともに、服用回数は原則1回とし、連用はできる限り避ける。
(4)安定ヨウ素剤の服用により、重篤な副作用のおそれがある者には、安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮し避難を優先させる。
これらの考え方に基づいた「安定ヨウ素剤予防服用に当たって」を以下に示す。
安定ヨウ素剤予防服用に当たって
災害対策本部が、安定ヨウ素剤予防服用の措置を講じた場合、誤った服用による副作
用を避けること、安定ヨウ素剤を的確に管理すること及び周辺住民等が確実かつ可及的
速やかに服用することが必要である。このため、実際的には、周辺住民の家庭等に、あ
らかじめ安定ヨウ素剤を事前に配布するのではなく、周辺住民等が退避し集合した場所
等において、安定ヨウ素剤を予防的に服用する。
(1)服用対象者 (2)服用回数 (3)服用量及ぴ服用方法 (注1)新生児、生後1ヶ月以上3歳未満の対象者の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリ
ウムの原薬(粉末)を水(滅菌蒸留水、精製水又は注射用水)に溶解し、単シロッ
プを適当量添加したものを用いることが現時点では、適当である。
(注2)3歳以上13歳未満の対象者の服用に当たっては、3歳以上7歳未満の対象者の服
用は、医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(滅菌蒸留水、精製水又は注射用
水)に溶解し、単シロップを適当量添加したものを用いることが現時点では、適当
である。また、7歳以上13歳未満の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの
丸薬ユ丸(ヨウ素量38mg、ヨウ化カリウム量50mg)を用いることが適当で
ある。
(注3)13歳以上40歳未満の対象者の服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬
2丸(ヨウ素量76mg、ヨウ化カリウム量100nlg)を用いることが適当であ
る。
(注4)なお、医薬品ヨウ化カリウムの製剤の実際の服用に当たっては、就学年齢を考慮すると、
7歳以上13歳未満の対象者は、概ね小学生に、13歳以上の対象者は、中
学生以上に該当することから、緊急時における迅速な対応のために、小学1年〜6
年生までの児童に対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬1丸、中学1年以上に
対して一律、医薬品ヨウ化カリウムの丸薬2丸を採用することが実際的である。ま
た、7歳以上であっても丸薬を服用できない者がいることに配慮する必要がある。
(注5)40歳以上については、放射性ヨウ素による被ばくによる甲状腺がん等の発生解
が増加しないため、安定ヨウ素剤を服用する必要はない。
(注6)医薬品ヨウ化カリウム、滅菌蒸留水、精製水・注射用水・単シロップ等は、原子力
災害時に備え、あらかじめ準備し、的確に管理するとともに・それらを使用できる
期限について注意する。
(付属資料7)
防災業務関係者の安定ヨウ素剤予防服用について
放射線誘発甲状腺がんの発生リスクは40歳未満に限られ、安定ヨウ素剤の予防
服用により、そのリスクを低減できるため、40歳未満の防災業務関係者について
も、その防災業務の内容に応じて、安定ヨウ素剤予防服用を考慮する必要がある。
ただし、ヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補伺
性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、ジューリング庖疹状皮膚炎の既往歴の
ある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用できないため、これらの者を防災業形
関係者とする場合、その防災業務の内容に十分配慮する必要がある。
(付属資料8)
防災業務関係者の放射線防護に係る指標について
(1)指標作成にあたっての基本的考え方 (2)防災業務関係者の定義について 表-2 表-3 注) 表3は一般公衆が家庭内の手近にある布や衣類を使用した場合のエアロゾルの
除去効率のめやすを示すものである。この除去効率は、人の呼吸方法及び衣類の使
用方法によって大きく変りうるものであることに留意すべきである。なお、防災業
務関係者の保護具としては、専用の防護マスクを準備すべきである。
(付属資料11)
空間放射線量率分布及び濃度分布の特徴
(参考文献)
排気筒から放出される放射性雲の等濃度分布図及び放射性雲からの等ガンマ線量率
分布図(U)、1990年、JAERI-M90-206
(付属資料12)
飲食物摂取制限に関する指標について
「5-3防護のための指標」の表3に示した値の算出についての考え方を以下に示す。
@放射性ヨウ素について
(付属資料13)
緊急被ばく医療体制の概要
(付属資料14)
各医療体制における設備、資機材等
各医療体制において整備すべき設備、資機材等の例について、次に示す。
(1)初期被ばく医療機関における設備、資機材、薬剤等 (2)二次被ばく医療機関における設備、資機材、薬剤等
@シャワー設備又は排水貯水槽を使用する身体除染設備 (3)三次被ばく医療機関における設備、資機材等 (付属資料15)
本指針の改訂の経過
緊急被ばく医療の基本理念は、「いつでも、どこでも、誰でも最善の医療を受けら
れる。」という命の視点に立った救急医療、災害医療の原則に立脚することである。
具体的には、原子力施設の従事者と周辺住民等を分け隔てなく、被ばく患者を平等に
治療しなければならないという共通認識から出発して、緊急被ぱく医療に携わる関係
者が適切な研修、訓練を受けることにより、円滑かっ迅速に被ぱく患者を診療できる
一体制を構築する必要がある。また、医療の視点からは、原子力施設における原子力緊
急事態の発生時のみならず、原子力緊急事態に至らない場合にも被ばく患者が発生す
る場合があり、これらにも対応できる体制を構築することも必要である。このため、
日常的に機能している一般の救急医療体制、災害医療体制との整合性を図ることと
し、原子力緊急事態を含めた異常事態の発生時には、救急医療体制に加え、必要に応
じ、広域的な災害医療体制にも組み込まれて機能し、実効性を向上させることとす
る。
以下に、緊急被ばく医療についての考え方を示す。
(1)組織
原子力緊急事態が発生した場合には、下図のような組織を整備し、実効性の向上に
努めることが必要である。
@原子力災害合同対策協議会の医療班
オフサイトセンターに設置された原子力災害合同対策協議会は、国、地方公共団
体、原子力事業者等を代表するもので構成される。原子力災害合同対策協議会に編成
された医療班は、緊急被ばく医療活動の把握及び広域的な医療活動の調整を行う。ま
た、地方公共団体の災害対策本部の医療グループ、医療機関等と緊密に連絡を取り、
必要に応じて助言、指導等を行う。
A地方公共団体の災害対策本部の医療グループ
地方公共団体の災害対策本部の医療グループは、地方公共団体、地域医療機関、
保健所等の関係者によって構成される。現地の医療活動を把握し、初期及び二次医療
機関等に助言、指導及び支援を行う。
B緊急被ぱく医療派遣チーム
三次被ぱく医療機関を中心とした医療関係者等からなる緊急被ばく医療派遣チー
ムは、地方公共団体の災害対策本部のもとで、被ばく患者等に対する診療について、
初期及び二次被ばく医療機関の関係者を指導するとともに自らもこれに協力して医療
活動を行う。
C緊急被ばく医療機関等
緊急被ばく医療機関は外来(通院)診療を行う初期被ばく医療機関、入院診療を
行う二次被ばく医療機関、より専門的入院診療を行う三次被ぱく医療機関からなる。
各医療体制の役割に応じて、サーベイランス(簡易な測定等による放射性物質の汚染
の把握)、スクリーニング、線量評価、除染、診療等を行う。また、初期、二次及び
三次医療機関の連携はもとより、高度総合医療を行う医療機関、日本赤十字社等から
の協力体制を構築しておく必要がある。
(1)初期被ばく医療体制
@原子力施設における初期被ばく医療
被ばく患者の応急処置とともに、サーベイランス、スクリーニングと被ばく線量
の測定を行う。その後、除染や汚染の拡大防止措置を行い、汚染や被ばくの程度な
どに応じて、迅速に被ばく患者を緊急被ばく医療機関に搬送する。
A避難所等で展開される周辺住民等を対象とする初期対応
避難所等では、周辺住民等を対象として、サーベイランス、スクリーニング及び
被ぱく線量を測定するとともに、周辺住民等の避難経路、一通過時間等の調査を行
い、これらの情報を管理する。また、安定ヨウ素剤の服用が行われる場合には、服
用、副作用等に備え、医師、保健師、薬剤師等の医療関係者を周辺住民等が退避し
た集合した場所等に派遣しておくことが望ましい。
B医療機関における初期被ばく医療
原子力施設近隣の初期被ばく医療機関では、原則として避難所や原子力施設から
搬送されてくる被ばく患者の外来診療を行う。
初期被ばく医療機関は、日常的に救急医療を実践している医療機関であり、ふき
取り等の簡易な除染や救急処置を行う。
緊急時においては、多くの周辺住民等が、特に医療処置を必要としない程度であって
も、心理的不安から各種医療機関、避難所等に検査等を求めて来ることについても留意
する。
(2)二次被ぱく医療体制
初期被ぱく医療の後、汚染の残存する被ぱく患者又は相当程度の被ばくをしたと推
定される被ばく患者を、入院診療を行なう二次被ばく医療機関に転送する。二次被
ばく医療機関においては、シャワー等による全身の除染、汚染創傷の治療等を行う
とともに、ホールボディカウンタ等を用いた測定及び血液、尿等を対象とした分析
により、汚染状況及び被ぱく線量の測定を行う。また、局所被ばく患者、高線量被
ばく患者等の診療を開始する。
(3)三次被ばく医療体制
二次被ぱく医療の結果、さらに放射線被ばくによる障害の専門的診療が必要とさ
れる高線量被ばく患者や重篤な内部被ばく患者等にっいては、地域の三次被ぱく医
療機関(学際的な高度専門治療を遂行するために、国公立大学附属病院などの医療
機関であることが望ましい。)に転送する。
地域の三次被ばく医療機関は、放射線防護協力機関(線量評価や放射線防護等に
おいて緊急被ばく医療機関に協力する機関)と地域三次被ぱく医療の機関群を形成
し、これらが三次被ぱく医療を担う。
地域三次被ばく医療の機関群は、放射線医学総合研究所と相互に連携を図り、被
ばく患者の診療、長期的な健康調査等を行う。また、初期及び二次被ばく医療機関
と連携して地域ブロックを形成し、より実効性のある被ばく医療体制を構築する。
地域の三次被ばく医療機関はその地域ブロック内の医療機関間における被ばく患者
の搬送、技術協力等の調整を行なう。
放射線医学総合研究所は、三次被ぱく医療の中心的機関として位置付けられる。
放射線医学総合研究所(放射線医学総合研究所緊急被ばく医療ネットワーク会議を
含む。)は、高度総合医療を行う医療機関との相互連携のもとに、高度専門的な除
染及び診療を実施し、全国の地域三次被ばく医療の機関群に対して、必要な支援及
び助言を行う。また、放射線医学総合研究所は地域の三次被ばく医療機関の一つと
しての役割も担う。
なお、被ばく患者の被ばく線量、汚染の程度、全身状態等によって、明らかにある程
度の被ばくをしたと考えられる者に対しては、初期被ばく医療機関を経ずに、二次被ば
く医療機関や三次被ばく医療機関によって対応を行うことが実際的である。この場合、
それぞれの医療機関の医療水準や医療資源のバランスを見ながら、実際に医療にあたる
現場の医師が二次被ばく医療機関相互あるいは三次被ばく医療機関との連携を考慮し
て、適切な搬送先や転送先を判断することが重要である。
初期、二次及ぴ三次被ばく医療機関等の緊急被ばく医療体制の概念を図1に示す。ま
た、緊急被ばく医療体制の概要を付属資料13に示す。
(1)国
国は、被ばく医療体制がより実効的なものとなるよう、地方公共団体及び医療関
係者の意見を十分に尊重しつつ、緊急被ばく医療体制を構築するとともに、各地域
が行う防災対策の実状やその必要性を十分に把握し、地方公共団体が有効な防災対
策が行えるよう支援する必要がある。
また、緊急被ばく医療に携わる者に対して、緊急被ばく医療に係る研修、訓練が
実効的なものとなるよう努めることも必要である。
(2)地方公共団体
地方公共団体は、被ばく医療関係者とも連携を図りつつ、実効的な緊急被ぱく医療
が行われる体制を整備しておく必要がある。具体的には、緊急被ばく医療に必要な
資機材の整備、維持及び管理について、国、医療関係者、原子力事業者などととも
十分に連携を図るとともに、医療関係者、周辺住民等への被ぱく医療等に関する知
識の普及、啓発及び防災訓練等を実施する必要がある。
また、被ばく医療にかかる資機材等の整備に当たっては、地域防災計画等で定め
た内容に沿って原子力防災対策が必要な区域内の人ロ、地勢等の条件を十分に勘案
し、必要な資機材を適正に配備することが必要である。
(3)原子力事業者
原子力事業者は、被ばく患者の発生に備えて、次の事項について留意する。
@通報連絡体制等の整備
原子力施設内での指揮命令、通報連絡及び情報伝達に係る体系的な整備を図ると
ともに、医療機関、搬送機関(消防、海上保安庁、自衛隊等)、地方公共団体等の
関係機関と通報連絡、被ばく患者の搬送、受入れについて緊密な関係を保持する必
要がある。
A請負事業者との連携
被ばく患者が発生した場合、請負事業者(発注者との契約関係により業務を請け
負った事業者)との間での役割分担、通報連絡体制、指揮命令系統等について、あ
らかじめ定めておく必要がある。
B応急処置及び除染
被ばく患者の応急処置及び除染を行う設備等を整備し、維持・管理して、被ばく
医療を行える体制を整備しておく必要がある。
C医療機関への搬送
被ばく患者を医療機関に搬送する際には、汚染の状況を把握し、傷病の状態を勘
案して、できる限り汚染の拡大防止措置を講じた上で、放射線管理要員(放射性物
質や放射線に対する知識を有し、線量評価や汚染の拡大防止措置が行える者)を被
ばく患者に随行させる必要がある。
(4)緊急被ばく医療機関
緊急被ばく医療機関は、次の役割を担うことが必要である。
@診療
緊急被ばく医療機関等は、それぞれの医療体制の下で被ばく患者の診療を行な
う。また、緊急被ばく医療機関の医療関係者は、定期的な研修、訓練を受けること
により被ばく医療水準の維持、向上に努める。
A汚染及び被ぱくの防止
緊急被ばく医療機関においては、被ぱく患者の診療に際して、医療関係者の二次
汚染及び被ばくを防止する。また、一般の患者の不安を軽減するとともに、一般の
患者や公衆に対して、汚染及び被ばくを防止する必要がある。
B地域における被ばく医療資産の効率的活用
地域ブロックごとに緊急被ばく医療に係る設備、資機材、人材等の資産を適正に
配置し、有効に活用する。
C緊急被ばく医療機関の連携
被ばく患者の重症度に応じて適切な医療を行うとともに、各医療機関の要員及び
資機材を有効に活用するため、緊急被ぱく医療機関間の病診(病)連携を図る。
D情報の共有化
医療機関で得られた情報、例えば、被ばく患者の線量評価、放射性核種の同定等
の情報は、事態の様相の判断に有用であるので、速やかに災害対策本部を含む関係
機関に伝達するとともに、原子力事業者、現地災害対策本部で得られた緊急被ばく
医療を実践するために必要な情報は、被ばく医療に係る医療機関に提供されること
が重要である。
(1)設備、資機材等
それぞれの医療体制において、整備すべき設備、資機材等を付属資料14に示
す。なお、これら設備、資機材等の維持及び管理を定期的に行うとともに操作を行
う者の確保と研修、訓練が必要である。
また、異常事態の発生に備えて周辺住民等及び防災業務関係者に対して、迅速か
つ的確に安定ヨウ素剤を使用できる体制を準備しておく必要がある。周辺住民等に
対する安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策についての参考資料を、付属資料6に
示す。
(2)ネットワーク
緊急被ばく医療において、その連携体制を強化し実効性の向上を図るため、情報
及ぴ人的ネットワークを構築することが必要である。
@情報ネットワーク
国と地方公共団体、地方公共団体と医療機関、医療機関相互の緊急被ばく医療に
関する連絡を円滑に行うため、救急医療情報システムや広域災害医療情報システム
などの情報ネットワークを活用、整備することが必要である。
また、複数の医療機関等が被ぱく医療の実例等をデータベース化しているが、こ
れらのデータを一元化するなどして、医療関係者が利用しやすいものとすることが
重要である。
A人的ネットワーク
緊急被ばく医療関係者が緊急被ばく医療の重要性を認識し、それぞれの役割や連
携体制の確認、情報交換等を行うため、全国的な緊急被ばく医療の緊密な人的ネッ
トワークを構築することが必要である。
(3)搬送体制
搬送が迅速かつ円滑に行われるとともに、搬送機関及び搬送される医療機関に必要
な情報が的確に伝達されることが必要である。
@複数の搬送経路の確保
搬送については、気象状況、自然災害等により交通が遮断又は混乱することを考
慮し、車両、船舶、航空機などを組み合わせ、複数の経路を確保しておくことが重
要である。
A通報連絡
原子力事業者は、施設等の事故の状況及び負傷時の状況等に関する情報を電話と
あわせできる限り文書で、搬送機関に迅速に通報するとともに、その後、得られた
被ばく関連情報についても順次、通報する必要がある。搬送機関、関係医療機関、
原子力事業者は、被ばく患者が発生した場合の通報連絡様式をあらかじめ統一的に
定めておくことが望ましい。
B放射線管理要員等の協力
放射線管理要員は、搬送に際し、汚染の拡大防止措置を実施するとともに、搬送
機関や搬送車両等の汚染の有無を確認し、原子力事業者を含む関係機関へ報告す
る。
C協力体制及び情報交換
被ぱく患者の搬送に備えて、搬送機関、関係医療機関、原子力事業者は、日頃か
ら訓練を通じて関係機関相互の協力体制を整えておくことが必要である。
また、搬送機関においては、搬送用資機材等の整備について相互に情報交換する
とともに、被ばく患者の搬送等に当たって、緊急被ばく医療の専門家から助言を得
られるような体制を整備することが望ましい。
(4)人材育成等
@人材の確保
被ばく患者の発生に対して適切に対応するためには、被ばく医療に関する知識と
技術を備えた医療関係者の確保が必要である。
A人材育成
医療関係者の職種等に合わせて、実際的なカリキュラムを定め、できる限り具体
的な研修を実施するとともに、不断の研修、訓練により人材を育てる必要がある。
B指導者の育成
多数の医療関係者を教育し、その知識と技能の維持向上を図るため、各地におい
て、地域の事情に通じた指導者を育成する必要がある。
C被ばく医療の訓練
訓練の目的を明確にし、その実効性を考慮して、原子力事業者、地方公共団体、
医療関係者等による地域的な通報連絡訓練から、国による総合合同防災訓練に至る
まで、救急処置を必要とするような被ばく患者を想定した訓練を行うことが必要で
ある。
D線量評価に関する技術の維持・向上
被ぱく患者に対して適切な対応を行うためには、迅速かつ正確に線量評価が行え
ることが重要である。そのためには、新しい知見を積極的に取り入れ、線量評価手
法の確立及び線量評価技術の開発等に努め、線量評価に関する技術の維持・向上を
行うことが重要である。
仮想的な事故評価において対象とする輸送物は、原子炉等規制法における規定に基
づき区分された輸送容器のうち、輸送容器内の放射能量等が多いB型輸送物及びB型
に次いで一定の放射能量を収納するA型輸送物とする。
○B型輸送物の例:使用済燃料、MOX燃料、高レベルガラス固化体
○A型輸送物の例:新燃料、濃縮U02、濃縮UF6、天然UF6
○L型輸送物の例:低レベル廃棄物
○IP型輸送物の例:低レベル廃棄物(六ヶ所埋設)、再処理後回収ウラン
想定事象としては、衝突事故、火災事故、落下事故等により遮へい性能及び密封性
能が劣化するような事象とする。臨界事故については、@輸送中、核燃料物質等は輸
送容器に収納されているため、原子力施設のように人為的な操作等が介在しないこと、
A特別の試験条件を超える条件でも容器の水密性は維持されるが、仮に浸水したとし
ても未臨界性は確保されることから対象としない。
なお、濃縮UF6の輸送物については浸水を考慮した評価は行われていないが、@特
別の試験条件を超える条件でも耐圧性能を有していること、A800℃、4時間の耐
火性能を有していること、B現状の輸送経路中、最も高い76mの高架から落下した
場合でも、特別の試験条件に包絡されることから、輸送容盟の水密性は維持され、未
臨界性は確保されると考えられる。
(1)B型輸送物
@想定事象
イ)遮へい性能の劣化
使用済燃料輸送物が特別の試験条件である800℃、30分を超えるような火災に
遭遇し、中性子遮へい材が全損(特別の試験条件下では半損)することを想定
ロ)密封性能の劣化
使用済燃料輸送物が特別の試験条件である非降伏面、9m落下を超える衝撃
を受け、燃料被覆管が100%破損することにより輸送容器からガス状放射性物質
が放出することを想定(風速1m/s、大気安定度F)
A一般公衆への影響
イ)遮へい性能の劣化
表面から1mで約4.5mSv/h、半径15mの距離で約0.25mSv/h(10mSvに達する
までに約40時問)、半径50mの距離で約20μSv/h。
原子力緊急事態に至る遮へい性能の劣化(表面から1mで10mSv/h)があった
場合には、半径15mの距離で10時間で5mSv程度。
ロ)密封性能の劣化
半径15mの距離で約16μSv/h(10mSvに達するまでに約26目)、半径50mの距
離で約5μSv/h。
原子力緊急事態に至る放射性物質の漏えいがあった場合は、半径15mの距離
で約5mSv以下(特別の試験条件下での許容値である漏えい率A2値/weekで10時
間放出)。
B防護対策
イ)遮へい性能の劣化
ロープ等を用いて半径15mの範囲を立入禁止区域とし、土嚢等で遮へい対策
をする。
ロ)密封性能の劣化
ロープ等を用いて半径15mの範囲を立入禁止区域とし、シート等により拡散
防止対策をする。
(2)A型輸送物
@想定事象
イ)遮へい性能の劣化
A型輸送物の収納物自体は新燃料等の低線量放射性物質であるため想定しな
い。(収納物表面で20〜50μSv)
ロ)密封性能の劣化
天然UF6輸送物が800℃、30分を超えるような火災に遭遇し、耐火保護カバ
ーが劣化して、収納物が放出することを想定
A一般公衆への影響
ロ)密封性能の劣化
距離に依存せず100μSv以下
B防護対策
ロ)密封性能の劣化
初期消火後、ロープ等を用いて半径15mの範囲を立入禁止区域とし、シート
等により漏えい防止対策をする。
対象輸送物に法令の基準を超える事象を想定しても、輸送経路周辺の一般公衆の被
ばく線量が10mSvに達するまでにかなりの時問的余裕があること、対象輸送物は隊列輸
送が行われており多人数の輸送隊で構成されていること等を考慮すれば、この問に事
業者による立入禁止区域の設定、汚染・漏えい拡大防止対策及び遮へい対策等が迅速
かつ的確に行われることにより、原子力災害対策特別措置法の原子力緊急事態に至る
可能性は極めて低いと考えられる。
また、仮に原子力緊急事態に至る遮へい劣化又は放射性物質の漏えいがあった場合
に、一般公衆が半径15mの距離に10時間滞在した場合においても、被ばく線量は5mSv
程度であり、事故の際に対応すべき範囲として一般公衆の被ばくの観点から半径15m
程度を確保することにより、防災対策は十分可能であると考える。
このめやすの矩離を提案するために・技術的側面においては原子力施設からの距離と周
辺住民等の被ばくの低減のために必要な措置をとるための判断に用いる指標線量との関連
を検討した。
T.原子力発電所等のEPZについて
(昭和55年6月に検討されたものであるが、今回の事故等を踏まえても変更の必要
はないものと考える。)
U.試験研究炉のEPZについて
両図は、最も高い線量を与えることとなる地表面放出、F型の大気安定度におい
て放出源から500mの距離における線量を1とした場合の放出源から風下方向への距
離による線量の低減割合を示すものである。ケーススタディとして両図には、最も
拡散しにくい型の大気安定度F型と最も拡散しやすい型の大気安定度A型の両方の
拡散傾向について地表面放出と地上高100m放出を選び示した。なお、風速は1m/s
とした。
これらの図を求めるに当たって放出条件としての放出高さはBWRは100m、PW
Rは60mとし、放出継続時間は24時間とした。気象条件については、厳しい条件を
用いるとの観点から原子力発電所サイトの気象観測資料をもとに各サイトの各方位
毎の24時間毎の年間の相対濃度を算出し、各相対濃度を小さい順番に累積し、その
累積出現頻度が97%に当たる相対濃度を与える24時問以内の気象条件を選定した。
この放出条件及び気象条件を用い、BWR及びPWR別に単位放出率当りの最大
線量と距離との関連を求め、放出源から8km及び10kmの距離において防護対策指標
の下限値(外部全身線量10mSv及び小児甲状腺の等価線量100mSv)となる希ガス及び
ヨウ素の放出量を求めた。
したがって、これらの図に示される線量と距離の関係を示す拡散条件のパターン
は、現実にはめったに遭遇しない厳しいもの(線量を高めに与えるもの)であるこ
とに留意すべきである。
(1)第3図は、BWR発電所の拡散条件において放出源から10kmの距離で防護対策指
標の下限値(外部全身線量10mSv及び小児甲状腺の等価線量100mSv)となる希ガス
及ぴヨウ素の放出量を示レたものである。
(2)第4図は、第3図と同様なものを放出源から8kmの距離について示したものであ
る。
(3)第5図は、PWR発電所の拡散条件において放出源から10kmの距離で防護対策指
標の下限値(外部全身線量10mSv及び小児甲状腺の等価線量100mSv)となる希ガス
及びヨウ素の放出量を示したものである。
(4)第6図は、第5図と同様なものを放出源から8kmの距離について示したものであ
る。
これらの結果は、放出源から8km及び10kmの区域の外側において屋内退避を必要
とするような放出量は、炉内内蔵量に対して希ガス100%及びヨウ素50%が格納容器
内に放出された際、格納容器から環境中に放出される量を相当に上廻る大きさでな
ければならないこと、また、その際8kmと10kmとで対応する放出量に顕著な差はな
いことを示している。
この事故の全期間中に放出されたとされている希ガスの全量は、1.8×lo6Ci(6.7
×1016Bq)(ガンマ線0・5MeV換算値)(ロゴビン報告(NUREG/CR-1250))と
されているが、この放出量の大部分は事故発生後7日間にわたり放出された。ここ
では、この放出量と同じ量の希ガスが、1日間で連続的に放出され、かつ、前述の
PWR型発電所で用いた現実にはめったに遭遇しない線量を高めに与える気象条件
を使用して解析を行うと、外部全身線量は、10km地点で7mSv程度、8km地点で9
mSv程度となり、当該区域の外側では、退避措置が必要となるような事態に至ること
はないものと考えられる。
なお、TMI事故で、環境へ放出された放射性物質は、大部分が放射性希ガスで
あり、放射性ヨウ素は、殆んど施設内に止まっていた。
4.昭和61年4月26日に発生した旧ソ連のチェルノブイル原子力発電所の事故におい
ては大量の放射性物質が環境中に放出され、このため周囲30kmにわたって住民の避
難が行われた。この放射性物質の大量放出は、事故発生耳後に原子炉の上部構造、
建屋等が重大な損傷を受け、この結果、放射能の「閉じ込め機能」が事実上完全に
失われたことに加え、炉心の黒鉛が燃焼し、火災となって放射性物質の高空への吹
上が生じて発生したものである。
この事故は日本の原子炉とは安全設計の思想が異なり、固有の安全性が十分では
なかった原子炉施設で発生した事故であるため、我が国でこれと同様の事態になる
ことは極めて考えがたいことであり、我が国のEPZの考え方にっいては基本的に
変更する必要はないと考える。
(参考資料)
ソ連原子力発電所事故調査報告書
(昭和62年5月28日原子力安全委員会ソ連原子力発電所事故調査特別委員会)
これらの図を求めるに際し、放出高さは設置許可申請書を基にし、放出継続時間
は、閉じ込め機能との関連から、低出力炉(熱出力500kW未満)用としては1時間、
中・高出力炉(熱出力500kW以上)用としては24時間とした。気象条件は、代表的に
日本原子力研究所東海研究所又は大洗研究所の気象観測資料をもとに、「発電用原
子炉施設の安全解析に関する気象指針」(昭和57年原子力安全委員会決定)を適用
し、各方位毎の各距離毎の相対濃度を算出し小さい順番に累積して、その累積出現
頻度が97%に当たる相対濃度を与える気象条件を選定した。したがって、この気象
条件は現実にはめつたに遭遇しない厳しいものである。
この放出条件及び気象条件を用い、低出力炉及び中・高出力炉別に外部全身線量
10mSv又は小児甲状腺の等価線量100mSvを与える放射性物質の放出量と距離との関連
を求めた。
(1)第7〜8図は、中・高出力炉用の放出継続時間(24時問)において、防護対策指
標の下限値(外部全身線量10mSv及ぴ小児甲状腺の等価線量100mSv)となる希ガス
及びヨウ素の放出量を、放出高さ(20〜80m)をパラメータとして示したものであ
る。
(2)第9〜10図は、低出力炉用の放出継続時間(1時間)において、防護対策指標の
下限値(外部全身線量10mSv及び小児甲状腺の等価線量100mSv)となる希ガス及ぴ
ヨウ素の放出量を放出高さ(0〜10m)をパラメータとして示したものである。
これらの結果は、EPZの外側において実効線量が10mSvとなるような放出量は、
安全審査における立地評価のための最大想定事故等の際に環境中に放出される量を
相当程度に上回る大きさでなければならないことを示しており、熱出力毎に設定し
たEPZについて、それぞれ十分な余裕を持って設定されていることを確認した。
また、特殊な試験条件等を有する施設である日本原子力研究所(東海)のJRR
-4(濃縮ウラン軽水減速冷却スイミングプール型試験研究炉)、日本原子力研究
所(大洗)のHTTR(低濃縮二酸化ウラン被覆粒子燃料黒鉛減速ヘリウムガス冷
却型高温工学試験炉)、日本原子力研究所(東海)のFCA(濃縮ウラン・プルト
ニウム燃料水平二分割型高速炉1臨界実験装置)、(株)東芝のNCA(低濃縮ウラン軽
水減速非均質型臨界実験装置)については、個別に検討を行いEPZを設定した。
(平成6年8月に検討したものであるが、今回の事故等を踏まえても変更の必要はな
いものと考える。なお詳細については「再処理施設周辺の防災対策を重点的に充実す
べき地域の範囲について」(平成6年原子力安全委員会了承)による。)
再処理施設の万一の事故を想定すると、放射性エアロゾルの放出を念頭にいれてお
く必要があるが、EPZの検討に当たっては、エアロゾルについても「発電用原子炉
施設の安全解析に関する気象指針」(昭和57年原子力安全委員会決定)の拡散式を適
用できると考えられる。
第11図に、六ヶ所再処理施設について試算した線量と風下距離の関係を示す。
これらの図を求めるに当たって放出条件としての放出高さは150mとし、放出継続
時間は24時間とした。気象条件については、厳しい条件を用いるとの観点から、サイ
トの気象観測資料をもとに、各方位の24時間ごとの相対濃度を1年間に亘って算出し、
各方位において相対濃度を小さい順番に累積し、その累積出現頻度が97%に当たる相
対濃度のうち最大相対濃度を与える24時間の気象条件を選定した。
この放出条件及ぴ気象条件を用い、主要な核種を全て包絡するとの観点から、溶解
槽における臨界の場合に放出されると評価される核種を対象に、放出源から5kmの地
点において、実効線量が10mSvとなる放射性物質の放出量を、それぞれの核種の単独
放出を仮定して求めた。得られた放出量を第ll図に併せて示す。
計算に当たっては、特に臨界事故の場合にその放出放射性物質の大部分を占める極
短半減期核種の、風下方向への時間減退による効果を無視している。
したがって、実際には、遠方になるに従い実効線量がより小さくなる。
万一の事故時においては、これらの核種が事故の形態に応じた割合で放出されるこ
とになるが、この計算の結果は、極めて大量の放出量を想定しなければ5kmの地点に
おいて実効線量が10mSvになることはないことを示しており、例えば臨界事故の場合
においては、硝酸ガドリニウム溶液の注入等の事故拡大防止対策がなんらないまま、
1020fissionsを相当に上回るような事故規模にならなければこのような事態に至るこ
とがないことを示している。
核燃料施設等(加工施設、臨界量以上の核燃料物質を使用する使用施設、廃棄施設)
については、放射性エアロゾルの放出を念頭にいれておく必要があるが、これについ
ては再処理施設に係るEPZの考え方が参考となる。また、EPZの妥当性を検証す
るために念のため臨界事故についても考慮することとするが、これらの施設で臨界事
故の発生の可能性を直ちに示すものではない。
これらの考え方を踏まえ、核燃料施設等のEPZについて施設の特質等に着目して
検討を行った。
(参考資料)
これらの図を求めるに当たっての放出条件としての放出高さは地上放出(Om)
とし、放出継続時間は1時間とした。気象条件は、代表的に日本原子力研究所東海
研究所の気象観測資料をもとに、各距離毎に、方位毎の毎時刻の相対濃度を1年間
にわたって算出し小さい順番に累積してぺその累積出現頻度が97%に当たる相対濃
度のうち最大の濃度を与える気象条件を選定した。
この放出条件及び気象条件を用い、代表的な核種として、濃縮度5%のウラン及
びプルトニウムについて、放出源から500m及び50mの距離において実効線量が10mS
vとなる放出量を求めた。
これらの拡散条件のパターンは試験研究炉の場合と同様、現実にはめったに遭遇
しない厳しいものである。
(1)第12図は、濃縮度5%ウラン及びプルトニウムについて、500mの地点で実効線
量10mSvとなる放出量を示したものであり、濃縮度5%ウランの場合は15kgU、プ
ルトニウムの場合は260mgPuとなる。
(2)第13図は、濃縮度5%ウラン及びプルトニウムについて、50mの地点で実効線量
10mSvとなる放出量を示したものであり、濃縮度5%ウランの場合は280gU、プル
トニウムの場合は4.7mgPuとなる。
これらの結果は、EPZの外側において実効線量が10mSvとなるような放射性物質
の放出量は、安全審査における立地評価のための最大想定事故等の際に環境中に放
出される量を相当程度に上回る量でなければならないことを示している。
これらの図を求めるに当たって使用した条件は以下のとおりである。
○臨界事故の規模・態様
・総核分裂数:1019個:JCO東海事業所臨界事故の規模(2.5×1018Fission)を上
回るものであり、また米国においても臨界事故の影響を検証する際に用いられてい
るものである(NRCRegulatoryGuide3.34及び3.35)。濃縮度5%ウランの溶液系
で発生したと仮定して、線源は臨界質量の体積である75リットル(60kgU)の球形と
し、時間分布は初期バーストが0.5秒間に1.O×1018個、その後10分間隔でL9×1017
個の核分裂反応が47回発生して、8時間継続するものとする(NRCRegulatory
Guide3.34の条件を使用)。
○施設からの放射線による被ばく
・考慮する被ばく:核分裂反応による中性子線、γ線、これらにより発生する二次γ
線について1cm線量を一次元Sn計算コードANISNで計算し求めた。
・遮へい・減衰条件:ウラン溶液、臨界事故が発生した設備等(ステンレス鋼厚さ3m
mと設定)、施設内外の構造物等(施設遮へいだけでなく、周辺構造物等の効果も含
め、コンクリート厚さ30cm相当と設定)、空気中に含まれる平均的な水蒸気(1m3
当たり15g)による遮へい・減衰を考慮した。
○施設から放出される放射性プルームによる被ばく
・考慮する被ばく:核分裂生成物のうち、希ガス100%、ヨウ素25%が8時間のうちに
放出されると仮定する(同NRCRegulatoryGuide3.34)。
・放出条件:放出高さは地上放出(Om)とした。建屋内の換気率等を考慮して、施
設から放出されるまでの時間を10分間と設定し、その間の減衰を考慮した。
・気象条件:代表事例として、放射性物質の放出計算と同様、日本原子力研究所東海
研究所(茨城県東海村)の累積出現頻度97%を用いた。また、地上放出であるため、
建屋等の風下方向の投影面積(代表例として1,000uの矩形と設定)による補正を行
った。
(1)第14図は、施設からの放射線による外部全身線量と距離の関係を示したものであ
る。
(2)第15図は、施設からの放出された希ガス及びヨウ素による外部全身線量及び小児
甲状腺の等価線量を示したものである。
しかしながら、これらの結果を求めるに当たっては、臨界事故の規模を総核分裂数
LO×1019個とし、施設から放出される放射性プルームによる被ばく量の計算では、核
分裂生成物のうちヨウ素25%が放出されると仮定するなど十分な余裕を持った仮想的
な臨界事故を仮定している。
よって、ICRP1990年勧告の取り入れを踏まえても、従来の加工施設等のEPZのめ一
やすの距離である500mは、十分な余裕を持って定められた距離であり、変更の必要は
ないものと考える。
なお、JCO東海事業所臨界事故では、核分裂総数2.5×1018個、核分裂生成物のう
ちヨウ素5%以下が施設内に放出された。
廃棄施設においては、臨界事故の発生の可能性は考えられない。
この臨界事故は、濃縮度18.8%の硝酸ウラニル溶液16.6kgUを形状管理されてい
ない沈殿槽に注入した結果発生したものであり、この臨界による総核分裂数は2.5×
1018個と評価されている。
この事故による周辺環境の影響について、大気中に放出された放射性物質(希ガ
ス及ぴヨウ素)による影響は、周辺環境の中で最も大きな線量となる地点の実効線
量が0.1mSv程度と評価されており、また、臨界反応により生じた中性子線、ガンマ
線による放射線量が、臨界反応収束までの約20時問の積算で、80mの地点で92、Sv、
200mの地点で7-9mSv、500mの地点で0-29mSvと評価`されている。このことから、実
際の臨界事故の際には、周辺環境の建屋等が大きな遮へい効果を有し、上記の計算
結果以上に距離による低減が期待できると考えられる。
なお、この事故では、核分裂によって生成した希ガス及びヨウ素は、環境にはほ
とんど放出されず(希ガス約8×10】2Bq/h、ヨウ素約1×101]Bq/h)、沈殿槽のほか
施設内に止まっていたと推定されている。
ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告
(平成11年12月24日原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会)
X.EPZに係るその他の検討事項
(1)最低限のEPZの考え方
EPZ検討の対象とした施設には、災害に至るような異常事象がほとんど考えられ
ず、屋内退避等の住民の防護措置を必要とするような範囲をあえて想定することが困
難な施設もあるが、このような施設においても、防災対策の実施面の観点からは、念
のため、ある程度の裕度を持ってあらかじめ対策を準備しておくことが重要と考えら
れることから、その範囲としては50m程度が適当とした。
(2)施設敷地内にEPZが包含される場合等の防災対策の考え方
施設のEPZが事業所敷地内に包含される場合、当該施設の事故により、事業所外
で屋内退避を必要とするような被ぱくが生じることは基本的には考えられない。
したがって、その場合、当該施設に係る事業所外でめ対応にっいては、発生した事
故の通報連絡、住民広報等の措置を準備しておけば十分と考えられ、住民に対する防
護措置や緊急時医療等の準備を講じておく必要はないと考えられる。また、緊急時モ
ニタリングについては、住民の防護措置の検討という観点以外に、周辺環境への影響
の確認の要素もあるため、ある程度の体制を準備しておくことも必要であると考えら
れる。
また、EPZ内に住民等が届住しないことが明らかな場合には、同様の考え方が適
用できる。
平成11年9月30日に発生したウラン加工施設における臨界事故を受け、
同年12月に成立した原子力災害対策特別措置法においては、災害対策基本法、
原子炉等規制法等と相まって、原子力の特殊性に応じた対応策を講じることと
なった。
その中で、原子力事業者に対し、敷地境界付近での一定の水準以上の放射線
量の検出その他の事象の発生について、国、自治体への通報義務を課すととも
に、国が緊急事態宣言を発出し、対策本部を立ち上げる際の基準として、敷地
境界付近での一定水準以上の放射線量の検出その他の事象について規定するこ
ととなった。
かかる放射線量あるいは事象については、初動の迅速性を確保するためのも
のであるため、その事態の発生が客観的に特定できることが重要であることか
ら、放射線量にっいては、推定方法による不確定要素がある予測線量ではなく、
実測値で得られる線量率をべ一スとした規定とすることとし、事象についても、
可能な限り具体・定量化を図ることとした。この際、排気筒等での放射性物質
の濃度等については、原子炉等規制法に基づき管理がなされていることから、
基本的には同法に基づく管理手法(測定器、測定方法等)を活用することとし、
また、平常時の変動レベルにも考慮する必要がある。さらに、これらの放射線
量又は事象については、原子炉等規制法に基づく保安規定等において通常許可
されている状態を超えることが原則であるが、迅速性を確保するために、例え
ば電源喪失の継続時間等について短時間のものであっても、あえて通報の対象
とするなどの内容としている。
なお、当然ながら、実際の防護活動を実施するに当たって、予測線量にっい
ては、緊急事態宣言後の各種具体的対応を判断する際の重要なファクターとな
るため、国、原子力事業者等が実際の活動においてこれを活用することが有効
である。
(1)-1敷地境界付近の放射線量(線量率)
JCO東海事業所臨界事故の教訓を踏まえれば、単位としては、屋内退避等の
指標に用いられるシーベルトとして取り扱うことが、関係者の理解のためにも妥
当であり、米国との整合性も担保される(※1)。
また、正確性を担保するためには、瞬時にのみ検知されるような事象を排除す
ること及び機械の誤作動等を排除するためにも、1地点の検知には米国のように
継続性の概念を導入しつつ、2地点以上では同時検出の場合速やかにとする。な
お、落雷については、2地点以上で同時に高レベルの線量率を計測することがあ
り、これについては現象としても明らかであることから明示的に除外する。
また、継続時問については、米国では異常事象の通告で60分、警戒態勢では
15分としているが、通報が迅速性を必要とされるものであること及び測定の実
効性の観点から、10分間とすることが妥当(※2)。
放射線量の基準としてぽ、@防災の観点からの通報であり、いわゆる通常のト
ラブルは対象でないこと、A防災指針、国際基準との整合性をとるという観点か
ら検討する。
その場合、米国では、事業者の基準(NEI)として、通常のトラブルも含め
た「異常事象の通告」として「1マイクロシーベルト毎時(60分以上)」、防
護活動の準備を開始する「警戒態勢」として「100マイクロシーベルト毎時
(15分以上)」を定めており、我が国の原子力災害対策特別措置法に基づいた
通報という観点からは、この間に設定することが適当。
さらに、現在の防災指針では、自治体が独自に防護対策の準備を開始するめや
すとして「γ線で10マイクログレイ毎時」を提案しているが、かかるめやすの
趣旨を踏まえれば、通報レベルとしては、その前段階に設定するのが適当。した
がって、本法に基づく国、自治体への通報事象は「5マイクロシーベル十毎時」
とすることが適当。
※10分については、我が国の放射線測定設備の基本測定単位が、通常2分
積算以下で行われており、ある程度の継続性を見るという観点及び自治体
のデータ管理が10分単位で行われていること等も踏まえ、実効性を有す
るもの。
敷地境界付近での線量測定は、異常事象を外部で迅速に把握するために行うも
のであるが、@中性子線は臨界事故を想定すればよく、かつその放出と同時にあ
わせてγ線も検出されること、Aα線、β線の直達線はその透過性が低いことか
ら考慮する必要がなく、α、β核種の放出は別途定める事象の中で放出量等を測
定するのが適当であることから、敷地境界周辺で測定するのはγ線のみで十分で
ある。
なお、念のため、1マイクロシーベルト毎時のγ線が検出された場合には、原
子力事業者に可搬式の測定器が原子力防災資機材として義務づけられており、そ
れを用いて中性子線を測定することにより、万全を期すこととすれぱよいと考え
られる。
現在、原子炉等規制法等に基づき・原子力発電所等の一部の施設には敷地境界
の放射線量の測定を行う施設が設置されているが、これらは、平常時における周
辺への放射線影響を常時監視する必要がある施設について行っているものである。
一方、原子力災害対策特別措置法においては、承地境界付近の異常な放射線量の
通報を行うという観点から放射線測定設備の設置を義務づけており、この目的に
必要な設備台数を検討すべきである。
今回の法律では、異常事象については、かかる線量測定とともに、施設内部の
異常事象に基づく通報を義務づけており、これらについては、原子炉等規制法等
に基づき施設内に設置された放射線管理設備及び今回の法律で義務づける資機材
等で検出が可能となっている。したがって、敷地境界付近で放射線量を迅速にと
らえられるような事象としては、(その発生の有無は別として、)技術的には臨
界事故が考えられるが、この場合においては等方向に放出される直達γ線の測定
が重要となり、これは、施設の形態にかかわらないことから、これを検出するた
めに必要な常時測定設備は1台で十分である。
しかしながら、今回の法律では、モニタリングポストの故障等も考慮し、2地
点以上での検出を通報の対象としたことから、2台以上の設置が適当である。
なお、モニタリングポストが施設の近隣(他の原子力事業者、都道府県等の設
置のポスト)にあれば、データを自ら監視できる状況にする等一定の条件の下に
自らが設置しなくてもよいこととするのが適当である。
(2)特定事象の考え方
B臨界事故の発生またはそのおそれ(原子炉(臨界実験装置を含む)での臨界
は除く)
C中央制御室等の施設の管理施設が運転不能になった場合
Dその他、原子力発電所等事前の兆候を把握できる施設の固有の事象
米国のregulatory guide3-67においても、核燃料サイクル施設に共通した事象
として、
a)放射性物質あるいはその安全装置に影響が出るおそれがある火事・自然
災害、事故
b)施設内の放射線量上昇、空気の放射性擁による汚染が制{卸不能で通常
レベルの100倍となる事態
c)核物質防護機能等の15分以上の喪失
d)使用済核燃料容器の容器あるいは取り扱い施設の損壊による放射能漏れ
e)特定核燃料物質が、臨界管理上の質量制限値を超えて不安定な容器に滞
留していることを発見したときあるい1まその他の原因で臨界事故が発生す
るおそれがあるとき
f)その他、事業者の緊急時対応組織を立ち上げなければならない事態
が設定されている。これらは、発電所、再処理施設等にも展開が可能であり、
a)、b)及びd)を@及びAに、c)をCに、e)をBに分類した。
さらに、これを具体・定量化すると、
排気(※1)については、舳濃度(Bq/cm3)をリアルタイムで測定し
ている放射性物質については、排出場所(排気筒)の拡散を見越した係数(※
2)及び通常時の変動(※3)を考慮した値が、10分間以上継続して検出され
たこととする。この値は、最大となる地点で5マイクロシーベルト毎時が10分
間継続することに該当する。
また、累積放出量(Bq)をリアルタイムで測定している放射性物質は、敷地
境界周辺において一定の被ばく線量(Sv)(※4)に該当する累積放出量が短
期間(※5)で検出されたこととする。この場合においては、排出場所(排気
筒)の拡散のみを見越した係数を考慮する。この値は、1回の事象によって最大
となる地点で50マイクロシーベルトの線量に該当する。
※2 「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針」(昭和57年原子力安全
委員会決定、平成元年3月、平成6年4月、一部改訂)のVI「想定事故時の
大気拡散の解析方法」等に基づき、排気筒高さと敷地境界までの距離による
変動係数を算定(別添1)
※3 年間1ミリシーベルトの管理は、原子炉等規制法上は3ヶ月平均の値で行
っているため、放射性物質の濃度にっいては通常時の変動も考慮して50倍
の幅を持たせることとする。なお、この50倍の意味としては、放射線業務
従事者に適用されるレベルである。なお、通報は、迅速性を確保する観点か
ら10分問の検出で行うこととし、仮にこの濃度が10時間継続しても、最
大地点で50マイクロシーベルトとなるレベルである。
※4 緊急時のレベルとして、防護活動の目安となる10ミリシーベルトの半分
の5ミリシーベルトを仮定し、その1/100の50マイクロシーベルトと
する。なお、ウラン、プルトニウム等のα核種については、その測定に当た
り、大きなバックグラウンドとなるラドン、トロンの影響を考慮する必要が
あり、ある程度の累積放出量がないと測定できないものである。
※5 通常の放出でも単純平均で500時間で50マイクロシーベルトに到達し
うるが、濾紙は通常3〜7日程度で交換しており、ある濾紙において急激に
検出されることが目安となる。また、この場合にはcpsによる測定を行っ
ており、増加傾向はリアルタイムで把握できる。
排水については、周辺監視区域外で放出されているものであり、通常時の変動
のみを考慮した値を検出したこととし、放出の継続時間は10分間以上とする。
この値は、敷地外で5マイクロシーベルト毎時が1・分間継続することに該当す
る。
ただし、再処理施設の排水については、原子炉等規制法上も海中の管を経由し
た拡散を見越し、累積放出量(Bq)で管理する別の体系とされていることから、
別途基準を定めることとし、この基準としては、上記排気の事象での放出の考え
方を用い、1回の放出で外部に50マイクロシーベルトの影響を与える放出を行
った場合とする。
なお、排水については、全ての核種についてバッチ式で濃度管理を行った上で
放出していること、バルブを閉めるなど異常時の対応が容易であること、実態上
は想定している以上の希釈効果が期待できることから、実際に原子力災割コ発生
する可能性は極めて小さい。
原子力事業所の放射線量については、50マイクロシーベルト毎時(敷地境界
付近の通報線量基準(5マイクロシーベルト毎時)の10倍の値(※1))が、
事業所内の管駆域周辺で10分間継続することとする。この場合においても、
放射線量は距離の2乗に反比例することから、周辺への影響は小さい。
原子力事業所の放射性物質については、周辺監視区域外での空気中(※1)の
放射性物質の濃度限度(年間1ミリシーベルト)の50倍にあたる放身寸性物質の
濃度が、事業所内の管理区域近傍で検出される状況とする(※2)。この値は、
管理区域周辺で5マイクロシーベルト毎β寺が検出されることに該当する。ただし、
実際の現場におけるサンプリングの困難性を考慮し・継続時間の概念は導入しな
いとともに、これに相当するおそれのある事象が発生した状態も通報事象とす乱
この場合においても、管理区域と敷地境界との間での拡散を考慮すれば、周辺へ
の影響は小さい。
※2 ここでは、爆発等による施設の異常事態を前提としているため、拡散の概
念は導入しない。なお、当該濃度が10時間継続しても、事業所内の管理区
域周辺において50マイクロシーベルト程度である。
なお、技術的には、遮へい効果の大きい再処理施設等における臨界事故の場合に
は、モニタリングポストでは検知されないこともあるが、核分裂生成物の施設外へ
の影響も考えられることから、通報を行う必要がある。
具体的には、発電炉、もんじゅ、ふげん、常陽(大型原子炉)については、
止める機能の喪失: 非常停止が必要な場合における制御棒による緊急停止失敗 冷やす機能の喪失: ECCS作動が必要となる原子炉冷却材の喪失 これに類する事象: 全交流電源(外部電源+非常用DG)が一定時間喪失
非常用直流電源系が一系統(直流交流変換装置及びバッテリー
の故障による)まで減少した状態が一定時間継続
使用済燃料が露出する燃料プールの水位低下
この他、施設のタイプに応じて類似事象を規定する。
なお、電源喪失については、迅速な初期動作が重要という観点から、5分間の継
続で通報対象とした。
また、使用済燃料が露出する以前の燃料プーノレの水位低下については、事業所内
で放射線量が高くなるが、その時点ではあくまで管理区域内のものであることから、
露出した時点で通報事象とした。
再処理施設は、電源喪失事象及び使用済燃料のプールの水位低下を規定する。
放射線量の基準としては、@国際基準との整合性をとること、A避難等防護措
置の観点から十分余裕があること、B今回のJCO東海事業所臨界事故が確実に
対応できること、という観点から、米国において、対応策の協議、所外モニタリー
ング等を開始する「サイト緊急事態」段階における「1ミリシーベルト毎時(1
5分以上)」をベースとして、線量は500マイクロシーベルト毎時(※1)と
し、継続時間は、通報と同様に10分とする。
なお、今回のJCO東海事業所臨界事故で計測されたガンマ線で840マイク
ロシーベルト毎時(中性子線で4.5ミリシーベルト毎時)は、緊急事態と判断
して緊急事態宣言を発出し、国の原子力災害対策本部を立ち上げるレベルとなる。
また、TMI事故を本基準に比較した場合、敷地周辺付近で当日午前に70ミ
リレントゲン毎時(=およそ600マイクロシーベルト毎時)を計測しており、
その場合にも国の原子力災害対策本部を立ち上げるレベルとなる。
A閉じ込め機能に異常が生じた場合において、一定以上の放射性物質又は放射
線が放出された場合
B臨界事故が発生した場合
Cその他、原子力発電所等で外部への大量の放出に至る兆候を示す事象が発生
した場合
基本的な考え方として、避難等の防護措置の観点から十分余裕があること等を
考慮し、放射性物質又は放射線の放出に係る事象を設定した。なお、通報対象と
なる事象は、かかる基準の1/100となる。
なお、排水については、基準値は設定するが、拡散による希釈効果等も考えられ、
実際に原子力災害が発生する可能性は極めて小さい。
@我が国関係法規及びICRP(国際方キ射線防護委員会)、NCRP(アメリカ放射
線防護測定審議会)等の出版物の平常時における職業人及ぴ一般人の線量限度
A我が国関係法規及びICRP、IAEA・NCRP等の出版物の職業人の緊急作業
に係る線量
B国際機関及び各国の轍対策に関連する線量(参考資料参照)
C放射線審議会の報告書等
DManual of Protective Action Guides and Protective Actions for Nuclear incidents(EPA-520/1-75-001,Sep・1975)
EPaul G.Voilleque Dose Action Level for Accidental Radiation Exposure of the General Piblic;
PP.183-204 6th Annual Health Physics Society Midyear Topical Symposium(1971)
FlAEA「電離放射線に対する防護及び放射線源の安全に関する国際基本安全基
準」における原子力発電所等周辺の防災対策に関する基準の取り入れ等に係る基本的
考え方について(平成8年3月原子力発電所等周辺防災対策専門部会)
G原子力防災対策の実効性向上を目指して(平成11年4月原子力発電所等周辺防
災対策専門部会)
出典:ICRPPublication63,放射線緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸
原則(日本アイソトープ協会訳)
原典:Principles for Intervention for Protection of the Public in a
Radiociples Emergency Annals of the ICRP,22, No.4(1991)Planning in Case
o fNuclear Accident-Technical Aspects,1989
防護措置 防護措置により回避される線量a) 屋内退避
避難
放射性ヨウ素に対する防護対策10mSvb)
50mSvc)
放射性ヨウ素による100mGvd)
a)外部被ばく及び預託内部被ぱくの実効線量の合計。
b)屋内退避の最長予想時間(2目)に対して最適化されている。関係当局はこれより短い
時間に対して低い介入レベルを助言することができ、あるいは次の防護措置、例えば避
難を実施する助けとすることができる。
c)避難の最長予想時間(7日)に対して最適化されている。関係当局は、これより短い時
間に対して、また、小グループの人々に対して避難が早急かつ容易に実施できる場合に
は、より低い線量で避難を開始するかも知れない。避難が困難な状況、例えば多数の住
民あるいは十分でない交通の場合には、より高い介入レベルが適切かもしれない。
d)甲状腺に対する預託線量。
出典:IAEA Safety Series No.115
International Basic Safety Standards for Protection against Jonizing
Radiation and for the Safety of Radiation Sources,1996.
防護措置 PAG(予測線量) 注釈 避難(又は屋内退避a))
放射性ヨウ素に対する防護対策1〜5remb)
25remc)避難(場合により屋内退避)は通常1remで開始すべきである)
州の医療担当官の承認が必要
a)屋内退避のほうが避難よりも防護効果が大きい場合には、屋内退避を採用してもよい。
b)外部線源からの被ばくによって生ずる実効線量当量及び初期段階における全ての重要な吸収経路によって生ずる預託実効線量当量の合計値。甲状腺及び皮膚に対する預託線量当量は、それぞれ5倍及び50倍大きい。
c)放射性ヨウ素からの甲状腺に対する預託線量当量。
出典:EPA 400-R-92-001 Manual of Protective Action Guides And Protective Actions for Nuclear Incidents(1992)
出典:NRPB,Principles for the protecrion of the public and workers in the event of accidental releases of radioactive materials in to the encironment and other radiological emergenses.Doc.NRPB,1.No4,1(1990)
出典:GRS Translations-Safety codes and Guides,Edition 1/89;Basic Recommendations for Emergency Preparedness in the Enviroment of Nuclear Facilities.
出典:Les Plasns Particuliers d`Intervention relatifs aux centrales electronucleaires,Christian Gerondeau.Ministere de 1` Interieur
40歳未満を対象とする。
ただし、以下の者には安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮する。
安定ヨウ素剤の配布時に、パンフレット等に上記4項目を記載し、これらの項目
に該当しない者に、安定ヨウ素剤を配布する。
1回を原則とする。
なお、2回目の服用を考慮しなけれぱならない状況では、避難を優先させること。
以下の表に示す。
対象者 ヨウ素量 ヨウ化カリウム量 新生児(注1) 12.5mg 16.3m 生後1ヶ月以上3歳未満(注1) 25mg 32.5mg 3歳以上13歳未満(注2) 38mg 50mg 13歳以上40歳未満(注3) 76mg 100mg
なお、甲状腺機能低下症を来たすと予想される甲状腺等価線量として、IAEA及び
WHOにより5Gyが提案されている。しかし、この甲状腺等価線量5Gyは、計算
上、実効線量として250mSvであり、防災業務関係者が災害の拡大の防止及び人命
救助等、緊急かつやむを得ない作業を実施する場合において許容される実効線量100
mSvをはるかに超えており、防災業務関係者といえども、この線量を被ばくするこ
とは許されない。
ただし、防災業務関係者のうち、原子力施設内において災害に発展する事態を防
止する措置等の災害応急対策活動を実施する者で、かなりの被ぱくが予測されるお
それがある場合は、甲状腺等価線量を瞬時に測定できる計測器がないこと、防護マ
スク等の装備の機能等を考慮しつつ、甲状腺機能低下症を予防するため、40歳以
上の防災業務関係者に対して、念のため、安定ヨウ素剤服用について、災害対策本
部等において、考慮することとする。この場合も、ヨウ素過敏症の既往歴のある者、
造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、
ジューリング庖疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用
させないよう配慮する。
指標を作成するに際しては、以下のICRP勧告やIAEAの報告書に示されてい
る緊急作業に係る防護体系の考え方を参考にするとともに、国内関係法令及び放射線
審議会の意見具申も考慮し、検討を行った。
@国際放射線防護委員会の1990年勧告(ICRP Publication 60)
A放射線緊急時における公衆の防護のための介入に関する諸原則
(ICRP Publication63(1992年))
B作業者の放射線防護に対する一般原則(ICRPPublication75(1997年))
C原子力又は放射線緊急時の介入基準(IAEASAFETYSERIESNo.109(1994年))
D基本安全基準(BSS)一電離放射線に対する防護及び放射線源の安全に関する
国際基本安全基準一(IAEASAFETYSERIESNo.115(1996年))
EICRP1990年勧告(ICRPPublication60)の国内制度等への取入れにつ
いて(意見具申平成10年6月放射線審議会)
F国内関係法令
○核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
○放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
○電離放射線障害防止規則
○人事院規則10-5(職員の放射線障害の防止)
防災業務関係者とは、具体的には以下の活動を実施する者のことである。
○周辺住民に対する広報・指示伝達、周辺住民の避難誘導、交通整理、放射線
モニタリング、医療措置、原子力施設内において災害に発展する事態を防止す
る措置等の災害応急対策活動を実施する者、及び放射性汚染物の除去等の災害
復旧活動を実施する者
場所 低減係数 屋外
自動車内
木造建屋
石造り建物
木造家屋の地下室
石造り建物の地下室
大きなコンクリート建物(扉及び窓から離れた場合)1.0
1.0
0.9
0.6
0.6
0.4
0.2以下
沈着した放射性物質のガンマ線による被ばくの低減係数
場所 低減係数 理想的な平滑な面上1m(無限の広さ)
地位上の土地の条件下で地面から1mの高さ
平屋あるいは2階だての木造家屋
平屋あるは2階だてのブロックあるいは煉瓦造りの家屋
その地下室
各階の面積が約450〜900uの面積の3〜4階だて建物1階及び2階
その地下室
各階の面積が約900u以上の多層建築物上層
その地下室1.00
0.70
0.40
0.20
0.10以下
0.05
0.01
0.01
0.005
家庭及び個人が利用可能なものによって口及び鼻の保護を行った場合の1〜5umの微粒子に対する除去効率
物質 折りたたみ数 除去効率 男性用木綿ハンカチーフ
トイレットペーパー
男性用木綿ハンカチーフ
男性用木綿ハンカチーフ
けばの長い浴用タオル
けばの長い浴用タオル
モスリンのシーツ
ぬれたけばの長い浴用タオル
ぬれた木綿のシャツ
木綿のシャツ
ぬれた女性用木綿ハンカチーフ
ぬれた男性用木綿ハンカチーフ
ぬれた木綿衣服
女性用木綿ハンカチーフ
レイヨンスリッパ
木綿衣服
木綿のシャツ
男性用木綿のハンカチーフ16
3
8
しわくちゃにする
2
1
1
1
1
2
4
1
1
4
1
1
1
194.2%
91.4
88.9
88.1
85.1
73.9
72.9
70.2
65.9
65.5
63.0
62.6
56.3
55.5
50.0
47.6
34.6
27.5
(1)空間放射線量率は放出率及びガンマ線の実効エネルギーに比例し、風速に逆比例
する。また、濃度は放出率に比例し、風速に逆比例する。
(2)地表面放出の場合は空間放射線量率及び濃度とも放出源から風下方向に距離をと
ることによって減少する。
(3)地表面からある高さをもって放出する場合は、
i)空間放射線量率及び濃度とも、放出高が高い程減少する。
ii)空間放射線量率については、その最大値の出現地点は、放出源から約1kmの
範囲内である。距離による減少割合は大気が安定である程小さい。
iii)濃度については、その最大値の出現地点は、大気が安定している場合には放出
源により遠方に、不安定な場合には近傍に出現する。
これらの図から、避難措置をとる場合、風下軸方向に対して直角方向に移動すれば、
大きな被ぱく低減効果があることが知られる。
lCRP Publication 63等 の国際的動向を踏まえ、甲状腺(等価)線量50m
Sv/年を基礎として、飲料水、牛乳・乳製品及び野菜類(根菜、芋類を除く。)の3
つの食品カテゴリーについて指標を策定した。なお、3つの食品カテゴリー以外の穀
類、肉類等を除いたのは、放射性ヨウ素は半減期が短く、これらの食品においては、
食品中への蓄積や人体への移行の程度が小さいからである。
3つの食品カテゴリーに関する摂取制限指標を算定するに当たっては、まず、3つ
の食品カテゴリー以外の食品の摂取を考慮して、50mSv/年の2/3を基準とし、
これを3つの食品カテゴリーに均等に1/3ずつ割り当てた。次に我が国における食
品の摂取量を考慮して、それぞれの甲状腺(等価)線量年相当する各食品カテゴリー
毎の摂取制限指標(単位摂取量当たりの放射能)を算出した。
A放射性セシウムについて
放射性セシウム及びストロンチウムについても飲食物摂取制限の指標導入の必要性
が認識されたことを踏まえ、全食品を飲料水、牛乳・乳製品、野菜類、穀類及び肉・
卵・魚・その他の5つのカテゴリーに分けて指標を算定した。
指標を算定するに当たっては、セシウムの環境への放出には89Sr及び90Sr
(137Csと90Srの放射能比を0.1と仮定)が伴うことから、これら放舛性セシウ
ム及びストロンチウムからの寄与の合計の線量をもとに算定するが、指標値としては
放射能分析の迅速性の観点から134Cs及び137Csの合計放射能値を用いた。
具体的には、実効線量5mSv/年を各食品カテゴリーに均等に1/5ずつ割り当
て、さらに我が国におけるこれら食品の摂取量及び放射性セシウム及びストロンチウ
ムの寄与を考慮して、各食品カテゴリー毎に134Cs及び1B7Csについての摂取制限
指標を算出した。
Bウラン元素について
核燃料施設の防災対策をより実効性あるものとするため、ウランについて我が国の
食生活等を考慮して指標を定めるとの方針のもとに、実効線量5mSv/年を基礎に、
全食品を飲料水、牛乳・乳製品、野菜類、穀類及び肉・卵・魚・その他の5つのカテ
ゴリーに分けて指標を算定した。
指標を算定するに当たっては、5%濃縮度の235Uが全食品に含まれ、これが5m
Sv/年に相当すると仮定し、さらに我が国における食品の摂取量を考慮して、各食
品カテゴリー毎に飲食物摂取制限に関する指標を算出した。
Cプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種について
再処理施設の防災対策をより実効性あるものとするため、IAEAの「電離放射線
に対する防護及び放射線源の安全に関する国際基本」(BSS)に記載されているア
ルファ核種(アメリシウム、プルトニウム等)について我が国の食生活等を考慮して
指標を定めるとの方針のもとに、実効線量5mSv/年を基礎に、全食晶を飲料水、
牛乳・乳製品、野菜類、穀類及び肉・卵・魚・その他の5つのカテゴリーに分けて指
標を算定した。
指標を算定するに当たっては、多種類のアルファ核種が共存して放出される可能性
があるので、核種毎に指標を作成することはせず、アルファ核種が全食品に含まれ、
これが5mSv/年に相当すると仮定し、さらに我が国における食品の摂取量を考慮
して、各食品カテゴリー毎に飲食物摂取制限に関する指標を算出した。
@ふき取り等の簡易な除染用資機材
A汚染の程度や被ばく線量を測定するための放射線測定器
B救急処置、合併損傷の初期治療等の救急外来診療を行うための医療資機材
C原子力施設との通信回線等
D広域災害医療情報システム関連の通信設備及び情報機器
E安定ヨウ素剤及びキレート剤等(ただし、キレート剤は、プルトニウム等による
内部被ばく患者に対し放射性物質の排出促進を目的に投与するものであり、必要に
応じて原子力施設の診療所等において用いる。また、これらの薬剤の使用は専門家
の助言を得て行うこと。)
Aホールボディカウンタ等の専門的な線量評価のための測定装置
B無菌治療室あるいはそれに準じる設備
C対象となる原子力施設の種類に応じた設備、資機材
D広域災害医療情報システム関連の通信設備及び情報機器
E安定ヨウ素剤及びキレート剤等
(これらの薬剤の使用は専門家の助言を得て行うこと。)
なお、これらに加え初期被ばく医療体制における設備、資機材等は、当然整備する
必要がある。
@高度専門的な線量評価のための設備、資機材
A広域災害医療情報システム関連の通信及び情報機器
B学際的な葺度医療及び総合医療、とりわけ無菌室における移植医療、集中治療、
熱傷治療等に必要な設備、資機材
なお、これらの設備、資機材等を地域の三次被ばく医療機関及び放射線医学総合研
究所等に、役割に応じ整備する必要がある。
1.平成元年3月: 国際放射線防護委員会(lCRP)1977年勧告の国内法令への取
入れに伴う、SI単位の導入、関連する用語の変更等を行った。 2.平成4年6月: 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDIネッ
トワークシステム)の取入れ等に伴う改訂を行った。 3.平成10年11月: 国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)
等の国際的動向を踏まえ、飲食物摂取制限に関する指標の改訂を行っ
た。 4.平成11年9月: 国際放射線防護委員会(ICRP)勧告や国際原子力機関(IAE
A)の報告書に示されている緊急作業に係る防護体系の考え方等を参
考に、防災業務関係者の放射線防護に関する指標を追加するとともに、
防護対策の実効性を考慮して、屋内退避及び避難等に関する指標の改
訂を行った。 5.平成12年5月: 平成11年9月30日に発生したJCO東海事業所臨界事故を契機
として、同年12月に制定された「原子力災害対策特別措置法」に基
づいた内容の追加、改訂等を行った。 6.平成13年3月: 国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の取入れに伴い
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の関係法令
の改正がなされることに合わせ、主に、「実効線量当量」を「実効線
量」に、「組織線量当量」を「等価線量」に変更するなど用語の改訂
とともに、内部被ばくに係る線量係数(Sv/Bq)の変更に伴う改訂を
行った。 7.平成13年6月: 臨界事故による被ばく患者に対する聚急被ばく医療の経験を踏まえ、
緊急被ばく医療をより実効性のあるものとし、国、地方公共団体、原
子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化を行った。 8.平成14年4月: 原爆被災者に対する長期追跡調査から得られた科学的知見及びチェ
ルノブイリ原子力発電所事故の調査結果等を踏まえ、安定ヨウ素剤予
防服用に係る防護対策について改訂を行った。