ドイツなど諸外国では「脱原発」を進める国もある中、脱原発を進める上で私達にはどのようなメリットとデメリットがあるのか。分かりやすく整理してまとめます。
脱原発を進めるメリットと意義
事故による甚大な被害リスクを軽減できる
原子力発電による事故は広範囲かつ長期間にわたり影響が残ります。原子力発電所を無くすことで、そうした事故による甚大な被害が発生するリスクを取り除くことが出来ます。
放射性廃棄物の発生を抑制できる
原子力発電所を運営するにあたって必ず発生する放射能廃棄物。特に使用済み核燃料の保管には数万~10万年と長い時間を要します。また、最終処分についても日本ではまだ道筋が付いているとは言えない状況にある点も周知の事実です。
原子力発電所の稼働を止めることで、そうした放射性廃棄物の新たな発生を無くすことが可能となります。
労働者の被爆を防ぐことが出来る
原子力発電所では放射線による被爆のリスクに晒される中、多くの労働者が作業に従事しています。我が国では法令によって定められた放射線管理基準の遵守が求められていますが、福島第一の管理区域内で警備員が水を飲む、喫煙をするといった違反行為も度々指摘されており、健康被害の発生が懸念されます。
核不拡散の観点からのメリットも
原子力発電所の稼働によって発生する使用済み核燃料には、核兵器の材料として転用が可能なプルトニウムが含まれています。日本のプルトニウム保有量はフランスやイギリスに保管されている分も含めて約45万トンとされ、これは原爆6000発分に相当します。平和利用を行うことを前提に保管が認められてきましたが、保有量が高止まりしている点に対して米国などから懸念の声も上がっています。
プルトニウムなどは厳重な警備のもと保管が行われていますが、テロなどにより奪われる危険性も指摘されており、核不拡散の観点から懸念の声も上がっています。
脱原発を進めることで、こうしたリスクを下げることが可能となります。
脱原発のデメリットと課題
脱原発を進める上でのデメリットと課題を整理します。
中短期的にはCO2排出量を増やす
福島第一原発事故を契機として稼働が減る国内の原子力発電所。原発による発電量の減少を補っているのが化石燃料を燃焼する火力発電所です。
長期的には再生可能エネルギーのコスト低減や、蓄電技術の安定化も期待されていますが、原子力発電所を止めることで二酸化炭素排出量を増やすことは明らかです。
日本政府は2018年に策定したエネルギー基本計画の中で、2030年時点の電源構成として原発を20~22%と目標を立てています。これは2050年時点のCO2排出量削減目標を前提につくられたものですが、原発の再稼働が遅れる中でCO2排出量の削減目標の達成が不透明であるとの声も上がっています。
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電力会社の経営基盤を毀損する
2012年に経産省が行った試算によれば、当年度中に全国すべての原発の廃炉を決定した場合、東京・東北・北海道の3電力会社と日本原子力発電の計4社が債務超過となることが判明しています。
また、債務超過に陥らない電力会社についても、例えば北陸電力は純資産の約半分を失うなど、経営基盤に深刻な影響が及びます。
電力会社の経営基盤の脆弱化は、電力供給の安定性にも少なからぬ影響を及ぼすことが予想されます。
中短期的には電気代の値上がりにつながる
大手電力各社は原発の停止による火力発電の燃料費増加を要因として、電気代の値上げを続けています。特に北海道電力では二度にわたり値上げを行い、二度目の値上げについては15%もの大幅な上昇となりました。
再度の国民的議論が必要
福島第一原発事故から時間が経つにつれ、世間の原発への関心も薄れているように感じます。しかし、原発が抱える問題には時間的猶予の無いものもあり、再度の国民的議論が必要と言えるでしょう。