小型原発とは?メリット・デメリットを分かりやすく整理して解説

日本でも導入が検討されている小型原発。そのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

小型原発とは

30万kW以下の「小さな」原子力発電所

IAEA国際原子力機関の定義によれば、小型原発は発電出力が30万kW以下の原子力発電設備のことをさします。通常、原子力発電所は1基あたりの出力が80~100万kWですから、従来型の3分の1以下とイメージしてください。

30万kWと言われても想像しづらいかもしれませんが、2人暮らしの一般家庭で10万世帯以上に電力を供給できる出力です。火力発電所では1基の出力が30万kWのものも珍しくないため、小型と言うほど小型ではないものの、トラックで輸送できる500kW程度のマイクロ原子炉の開発も進められています。

日本企業もこの分野に参画しており、小型原発の代表的な企業として知られる米国ニュースケール社にはIHIや中部電力、日揮などが出資をしています。

小型原発のメリット

安全性が高い

小型原発は世界中で様々なメーカーが開発にしのぎを削っており、それぞれ仕様が異なるため一概にまとめることは出来ませんが、例えば米国のニュースケール社の小型原発は原子炉全体を大きなプールに沈めた状態で運転を行います。万が一事故が起きた場合でも、原子炉がプールに浸かっているため電力供給や特別な運転操作をすることなく冷却状態を保つことができるとされています。ニュースケール社の小型原発の場合、福島第一原発事故でも発生したメルトダウンは理論上起こらないとされています。

環境負荷が小さい

従来型の原子力発電と同様に、発電時に二酸化炭素を排出しません。設備の建設や燃料となるウランの精製まで含めたライフサイクル全体での温室効果ガス排出量は火力発電と比較して大幅に減少することが期待されています。

再生可能エネルギーとは異なり、人為的に発電量を変動させることができるため、脱炭素電源として大きな期待を集めています。

また、現在は電力網が外部と接続していない離島などでは石油を燃料とした火力発電による発電が主流ですが、石油火力は燃料の貯蔵・運搬が容易である反面、二酸化炭素排出量が天然ガス火力発電を比較しても約2倍と環境負荷が大きいです。マイクロ原子力発電が離島地域に普及することで、こうした離島地域の電力供給の脱炭素化が急速に進む可能性があります。

将来的には発電コストが安くなる

小型原発は多くの部材を工場で組み立て、現地で据付けを行います。従来型の大型の原子力発電所よりも工期の短縮が見込め、建設コストを抑えられることで発電コストの低減が期待されています。

将来的には大型原発の発電コスト(日本では約11円/kWh)の半額程度に抑えることをニュースケール社が目標として掲げていますが、足元では米国でのプロジェクトの発電コストが13円/kWhと大型原発よりも高くなることが見込まれたことでプロジェクトが中止に至った例もあり、思うようにコスト低減が進んでいない状況にあります。

小型原発のデメリット

放射性物質を利用することへのリスク

発電所における事故発生リスクは大型原発より低く、理論上は福島第一原発事故のようなメルトダウンが起こらないとされている一方、放射性廃棄物などが発生する点は従来の大型原子力発電所と同様です。放射性物質の適切な管理は従来型の原子力発電所と同様に求められることから、それがコスト増に繋がる可能性もあります。

コスト低減に課題も

大型原子力発電所よりもコストを低く抑えられることが期待されている小型原発ですが、足元では想定よりコストが膨らんでおり低コストな発電方法としての地位を確立するに至っていません。

今後の技術革新や量産効果によるコスト低減が求められます。